地産地消は、売る仕組みではなく「生きがいの循環」だった
山口県光市。
瀬戸内海と山に囲まれたこのまちの一角に、
15年以上にわたり地域の農業と暮らしを支え続けてきた場所があります。
それが、光市農業振興拠点施設 里の厨です。


直売所、加工室、体験室、研修室。
一見すると、機能が集まった“便利な施設”に見えるかもしれません。
しかし、今回じっくりと話を聞いて見えてきた里の厨の正体は、
農産物を売る場所ではなく、人と土地の関係を編み直す拠点でした。

「売る場所がなくなった」──地域農業の“行き場”として
里の厨が生まれた背景には、
地方の農業が直面していた、非常に現実的な問題がありました。
「市内にいくつかあった市場が、次々と閉鎖されたんです。
農家さんたちが“どこに持って行けばいいのか分からない”状況になった」
そう語るのは、森田哲次店長。

高齢化が進み、
少量多品目でつくられる光市の農産物は、
大規模流通や量販店の仕組みにはなかなか乗りません。
「良いものはある。でも、売る場所がない」
その矛盾を解消するためにつくられたのが、里の厨でした。
さらにこの施設は、
光市と旧大和町が合併した際、
“これからも一緒にやっていこう”という意思表示として生まれた場所でもあります。
単なる直売施設ではなく、
地域の未来に対する“約束”としての意味も背負っていたのです。
地産地消の本質は「量」ではなく「正直さ」
里の厨の売り場に立つと、
まず気づくのが、商品の「日付」です。
「ここでは、出荷日が必ず入ります。
そして、基本的に店頭に並ぶのは2日間だけです」


このルールは、生産者にとっても簡単なものではありません。
出荷のタイミング、鮮度管理、価格設定──
すべてに責任が伴います。
それでも続けている理由は、
消費者に対して、正直でありたいから。
「生産者にも消費者にも、正直であろうと決めたんです」
この姿勢が、
“安いから買う”ではなく、
“ここで買いたいから来る”という利用者を生み出しています。


実際、旬のスイートコーンやいちじく、トマトなどを目当てに、
宇部市や周南市など、遠方から足を運ぶ人も少なくありません。
量は少ない。
でも、その分だけ、理由のある買い物が生まれています。
生産者の「生きがい」を支える場所
今回の取材で、最も印象的だった言葉があります。
「里の厨は、健康施設だと思っています」
栄養価やカロリーの話ではありません。
森田店長が指していたのは、生産者の心の健康でした。
「ここに出荷できることが、生きがいになっている方がたくさんいるんです」

畑に立ち、
作物を育て、
それが売れ、
誰かに食べてもらえる。
この循環があることで、
高齢の生産者も畑に立ち続ける理由を持てる。
「怪我をして来られなくなったとき、
“里の厨に来られないことが一番つらかった”
そう言われたこともあります」
医療費削減や数値では測れないけれど、
確実に地域の暮らしを支えている機能が、ここにはあります。
「旬しか並ばない」売り場が、食育になる
里の厨の売り場には、
一年中同じ野菜が並ぶことはありません。
「今、採れないものは、ありません」

それは時に、
「なんで今日はきゅうりがないん?」
「なんで今、玉ねぎがないん?」
という声にもつながります。
しかし、その“ない”という体験こそが、
食育の入口です。
小学校の見学では、
「今は何の季節?」
「秋に採れる野菜は?」
そんな問いかけが自然に行われています。
スーパーでは学べない、
季節と暮らしの関係が、ここにはあります。


施設を“使う”ことで、地域とつながる
●直売所
野菜・果物を中心に、鮮魚、精肉、惣菜まで。
少量でも旬を大切にし、
生産者の顔が浮かぶ売り場づくりがされています。


●加工室
お弁当、惣菜、季節限定スイーツを製造。
光市産いちごを使った「いちご大福」「いちご姫」は、
ここでしか出会えない名物です。


●体験室・研修室
料理教室、食育イベント、地域活動、企業研修まで。
「学ぶ」「集まる」機能が、自然に地域をつないでいます。
●パンコッペ・お侍茶屋
施設内にはパン工房と食事処。
光市産米を使った米粉パンは、
“米粉の概念が変わる”と評判の逸品です。


地産地消のゴールは「来てもらうこと」
「本当に美味しいものは、
採って、作って、すぐ食べてもらうのが一番なんです」
だからこそ、
里の厨は“外へ送る拠点”ではありません。
来てもらうための場所です。
東京へ運ぶより、
光市に足を運んでもらう。
それが、
農業も、観光も、暮らしも、
一緒に支える地産地消のかたち。

援むすび山口ぶっちゃけインタビュー
── 森田哲次店長という「ひと」
ここからは少し肩の力を抜いて。
肩書きや立場を外し、「森田哲次さん個人」の話を聞きました。
施設や制度の話だけでは伝わらない、
里の厨の“空気感”の正体が、ここにありました。


■個人的に好きな農林水産物は?
「里芋ですね」
即答でした。
派手なブランド品でも、特産品でもありません。
でも、その理由が森田店長らしい。
「里芋の、あのねっとりした煮付けが好きなんです」
さらに話を聞くと、
外国産里芋が大量に入ってきた時代に、
国産の里芋の“味の違い”をはっきり感じた経験があったそうです。
「国産って、こんなに美味しいんだって思いました」
派手な言葉はない。
でも、日々の現場で“味を見てきた人の実感”がにじみます。
■思い出のソウルフードは?
「母が作ってくれた、スクランブルエッグですね」
幼い頃、病弱だった森田店長。
食事が喉を通らないとき、
母が作ってくれたのが、お粥とスクランブルエッグでした。
「味付けは、醤油と少しの砂糖だったと思います」
お店の名前でも、名物料理でもない。
でもこの話を聞いて、
“食は記憶になる”ということを、改めて実感しました。
地産地消の原点は、
こうした家庭の味にあるのかもしれません。

■山口県内でおすすめの場所は?
森田店長が挙げたのは、
有名な観光地ではありません。
「千望山(せんぼうざん)ですね」
瀬戸内海を見渡せる、小高い山。
右に九州、左に四国が見える場所。
「大学時代、よく一人で行ってました。
そこで景色を見て、気持ちを整理してましたね」
誰かと行く場所ではなく、
一人で行く場所。
この答えに、
森田店長の“静かな人柄”がよく表れていました。
■休日はどうやって過ごしていますか?
「読書ですね」
しかも、一冊ではありません。
「5~6冊を並行して読みます」
ジャンルは小説、時代小説、活字なら何でも。
言葉の選び方、話の構成力、
インタビュー中に感じた“語彙の豊かさ”は、
この読書量から来ているのでしょう。
■実は、異色の経歴
森田店長は、
もともと農業畑の人間ではありません。
教材・書籍を扱う会社で、
長年営業として働いてきました。
60歳を目前にして、
会社を離れることになり、
縁あって里の厨に関わることに。
「最初は、正直アルバイトのつもりでした」
しかし、現場に入り、
生産者の声を聞き、
施設の意味を理解するうちに、
気持ちは大きく変わっていきます。
「やるなら、ちゃんとやろうと」
営業時代に培った
調整力・言葉の力・人を見る目が、
今の運営に活かされています。

■最後に見えた“森田店長らしさ”
取材を通して感じたのは、
森田店長が前に出る人ではない、ということ。
でも、
人と人、
生産者と消費者、
過去と未来を、
静かにつなぎ続けている人でした。
「ここに来られること自体が、生きがいになる人もいるんです」
その言葉に、
この施設の本質が詰まっています。

中村店長の「山口直送!トリビアな話」|光市編
●「里の厨」という名前の意味
「厨(くりや)」とは、食べる場所ではなく、
“台所に使う食材が集まる場所”を指す言葉。
里の厨は、レストランではなく、
地域の台所として生まれた施設です。
●旧・大和町と「まほろば」
光市と合併する前、旧大和町では
「まほろばフェスタ」という祭りが行われていました。
“まほろば”は、住みよい場所・心の拠り所を意味する言葉。
名前は消えても、その想いは今もこの地に残っています。
●光市は、守るための場所だった
光市の石城山(岩木山)には、
古代の山城跡があり、瀬戸内海を一望できます。
ここはかつて、海と陸を見張る“守りの要所”でした。
人が集まり、暮らしが続いてきた理由が、
この地形にあります。
編集後記|援むすび山口地産地消プロデューサーとして
里の厨を語るうえで、
森田店長という“人”を外すことはできません。
制度でも、設備でもなく、
人の姿勢が、場所の空気をつくる。
だから、ここは“売れる”。
だから、ここに人が集まる。
地産地消とは、
農産物の話ではなく、
人の話なのだと、改めて感じました。
知ると、好きになる。
好きになると、逢いに行きたくなる。
その入口に、
今日も里の厨はあります。

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