取材日:2026年2月27日
聞き手・取材・文・撮影/援むすび山口編集長・地産地消プロデューサー 重村光寛

白銀本舗 杉本利兵衛本店 代表取締役社長 杉本洋右様
防府の誇り。蒲鉾「白銀」に込められた100年の想い
知ると美味しくなる、一本の蒲鉾の物語
「防府のお土産、何がいい?」
そんな話になったとき、地元の人たちの多くがこう答えます。
「白銀を持っていけば間違いない。」
防府市民にとって、それほどまでに当たり前の存在でありながら、その背景や物語を知っている人は、実はそれほど多くないかもしれません。
今回、援むすび山口の地産地消プロデューサーとして、防府市三田尻にある 株式会社杉本利兵衛本店 を訪ね、代表取締役 杉本洋右社長にお話を伺ってきました。
創業は 1919年(大正8年)。100年以上続く蒲鉾店です。
しかし、取材を進めるうちにわかってきたのは、これは単なる老舗の蒲鉾ではなく、
防府という土地の歴史と文化が詰まった一本だということでした。

外務大臣が名付けた「白銀」
まず驚いたのが、この蒲鉾の名前の由来です。
「白銀」という名前は、昭和11年、光市出身の外務大臣 松岡洋右氏によって名付けられました。
松岡洋右氏といえば、日本が国際連盟を脱退した際の外務大臣として歴史に名を残す人物。その松岡氏が、杉本利兵衛本店の蒲鉾を食べ、その味を絶賛したといいます。
そして、その美しい白さから
「白銀」
という名前が付けられました。
さらに驚くのは、現在のパッケージに使われている「白銀」の文字。
実はこれ、当時松岡洋右氏が書いた書体を元にしているのだそうです。
つまり、この商品名そのものが、すでに一つの歴史なのです。



山口県だけの「焼き抜き蒲鉾」
蒲鉾と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは「蒸し蒲鉾」。
しかし山口県では、少し事情が違います。
山口県の伝統は、焼き抜き蒲鉾
板の下から直火でじっくり焼き上げる製法です。
蒸し蒲鉾に比べて水分が抜けるため、食感はしっかりとした弾力があり、魚の旨味も濃く感じられます。そのため県外の人からはよく「山口の蒲鉾は刺身みたい」と言われるそうです。
蒲鉾でありながら、魚に近い食感。
それが山口の蒲鉾文化なのです。


白銀の“コリコリ食感”の秘密
白銀を食べたことがある人なら、きっと一度は思ったことがあるでしょう。
「なんでこんなに歯ごたえがあるの?」
その秘密は、ある工程にありました。
普通の蒲鉾は、すり身を板につけたらすぐに焼きます。
しかし白銀は違います。
一晩寝かせる。
すり身を寝かせることで、タンパク質の結着が強まり、独特の弾力が生まれるのです。
さらに焼き抜きの工程では、フィルムなどをかけず、裸のまま焼き上げる。
これによって、表面にほどよい締まりが生まれます。
実は過去に一度、柔らかく改良したことがあったそうです。
しかしそのとき、常連客から「これは白銀じゃない」という声が相次ぎました。
その経験から改めてわかったのが、この食感こそが白銀の個性だということでした。

防府という土地が生んだ蒲鉾文化
蒲鉾は、実は土地の文化と深く結びついた食べ物です。
防府の三田尻は、かつて港町として栄えていました。
魚が集まり、塩田があり、そして佐波川の水がある。
蒲鉾づくりに必要な条件が揃っていたのです。
当時は、港に上がった魚をすり身にし、保存性を高めるために蒲鉾が作られました。
現在、白銀では
・スケソウダラ
・キントキダイ
などの白身魚を使用していますが、そのルーツには防府の海と歴史があります。
まさに「身土不二」。
その土地だからこそ生まれた味なのです。


まずは何もつけずに
杉本社長が何度も語った言葉があります。
「まずは何もつけずに食べてください。」
蒲鉾はすでに、魚の旨味、塩、弾力
すべてが完成している食べ物です。
醤油をつけると、味が強くなりすぎる。
おすすめは、そのままか、わさび。
そしてもうひとつ大事なのが
厚さ5mm
薄く切って食べることで、白銀の弾力が最もよくわかるそうです。


防府の贈答文化
白銀が防府で広まった理由には、冠婚葬祭の文化があります。
結婚式や法事の引き出物として使われてきた白銀。
もらった人は近所や親戚におすそ分けをします。
こうして白銀は、口コミで広がっていきました。
防府では今でも「贈り物なら白銀」
と言われるほどの存在になっています。

白銀トリビア
“かまぼこ板の銀紙”
取材のあと、杉本社長からひとつ面白いトリビアを教えていただきました。
白銀の蒲鉾をよく見ると、板の上に銀紙が貼られています。
実はこれ、板付き蒲鉾ではとても珍しい仕様なのだそうです。
理由は創業者の気遣いでした。
白銀の蒲鉾板には松の木が使われています。
松は香りが強いため、「蒲鉾に香りが移らないように」
という配慮から銀紙を貼るようになったのだそうです。
ところが、思わぬ利点が生まれました。
銀紙があることで、蒲鉾が板から剥がしやすい。
結果的に、お客様から「白銀は剥がしやすい」と好評になりました。
しかもこの銀紙、機械ではなく社内で手作業で貼っています。
エコの時代、必要なのかという議論もあるそうですが、創業者の想いとお客様の評価から、今も続けられています。


100年続く理由
杉本利兵衛本店が100年以上続いている理由は、とてもシンプルでした。
変えたものと変えなかったもの。
変えたものは、原材料や流通など、時代に合わせた部分。
しかし、焼き抜き製法、食感、味
これらは変えていません。
白銀のこれから
現在、杉本社長は新しい挑戦にも取り組んでいます。
蒲鉾に合う日本酒とのコラボレーションなど、新しい価値づくりです。
そのテーマが、白銀比(1:√2)
日本人が美しいと感じる比率とされるものです。
伝統を守りながら、新しい価値を生み出す。
それが四代目としての使命だと語ってくれました。

知ると好きになる
正直に言うと、私自身も白銀という名前は知っていました。
しかし、なぜ防府で生まれたのか、なぜこの食感なのか
そこまでは知りませんでした。
今回の取材で感じたのは、白銀はただの蒲鉾ではなく
防府の物語、だということです。
知ると好きになる。
知ると美味しくなる。
好きになると、逢いに行きたくなる。
白銀は、まさにそんな一本でした。

援むすび山口ぶっちゃけインタビュー
白銀本舗杉本利兵衛本店 杉本洋右社長の“山口愛”
白銀の歴史や製法について、じっくりとお話を伺ったあと、
最後に杉本洋右社長に、少しリラックスした「ぶっちゃけインタビュー」をお願いしました。
テーマはシンプル。「杉本社長の山口愛」
防府というまちで、100年以上続く蒲鉾屋を守る四代目は、
山口県のどんなところが好きなのでしょうか。
好きな山口の特産品
まず最初に聞いたのは、
「個人的に好きな山口県の農林水産物や特産品は何ですか?」という質問です。
杉本社長が真っ先に挙げたのは、意外にも蒲鉾ではありませんでした。
「やっぱり 外郎(ういろう) ですね。」
山口県の名物和菓子として知られる外郎。
その中でも特に好きなのが、御堀堂の外郎なのだそうです。
もちろん、山口には他にも美味しい外郎がありますが、
「やっぱり御堀堂が好きですね」と笑顔で語ってくれました。
もう一つ挙げてくれたのが、井上商店の“しそわかめ”
山口県民なら一度は食べたことがある、あのご飯のお供です。
「やっぱり美味しいですよね。」地元の人らしい、素直な答えでした。
思い出のソウルフード
続いて聞いたのは、子どもの頃の思い出の味。
杉本社長がすぐに思い浮かべたのは、
山口のソウルフードとして知られる「どんどん」でした。
「小さい頃、親と一緒によく行っていました。」
注文するのは、肉うどん。
子どもの頃の外食といえば、どんどんだったそうです。
もう一つ、思い出の味として教えてくれたのが、
徳山にあるラーメン店「第二スター」
子どもの頃、家族に連れて行ってもらうのが楽しみだったお店で、
特に好きだったのがチャーシュー麺だったそうです。
さらに、防府で忘れてはいけないお店として名前が挙がったのが、
中華料理店「噢快餐(おこいさん)」天満宮近くにある老舗中華料理店で、
杉本社長のおすすめは、黒酢の酢豚、そして唐揚げだそうです。
山口県のおすすめ観光スポット
次に聞いたのは、
「山口県内でおすすめの観光スポット」。
まず名前が挙がったのは、やはり「防府天満宮」でした。
「やっぱり好きですね。」と語る杉本社長。
しかし、もう一つ挙げてくれた場所が、少し意外でした。
それが右田ヶ岳(みぎたがたけ)防府市にある人気の登山スポットです。
「登山をするときに登るんですが、山頂から見る防府平野の景色がすごく好きなんです。」
さらにもう一つ。防府ではありませんが、
最近家族で訪れて印象に残った場所として教えてくれたのが、
下関市・毘沙ノ鼻。本州最西端の岬です。
「天気がすごく良くて、景色が本当にきれいでした。」
山口県の自然の豊かさを改めて感じた場所だったそうです。
杉本社長の意外な素顔
最後に聞いたのは、「杉本社長の意外な素顔」。
実は杉本社長、最近ハマっていることがあるそうです。
それが、マラソン。
走り始めたきっかけは、コロナ禍でした。
外出の機会が減る中で、健康のために走り始めたのがきっかけだそうです。
現在はなんと下関海響マラソンにも出場。
一昨年は完走し、昨年はケガで途中リタイア。
それでも走ることは続けているそうです。
「走るのはしんどいですが、体も心も調子が良くなります。」
と笑いながら話してくれました。

白銀トリビア
①外務大臣が名付けた蒲鉾
「白銀」という名前は、昭和11年、光市出身の外務大臣 松岡洋右が命名しました。
その美しい白さを見て「白銀」と名付けられたと言われており、現在のパッケージの書体も、当時の筆文字が元になっています。
②一晩寝かせる蒲鉾
白銀の独特のコリコリ食感は、すり身を板につけたあと 一晩寝かせる工程から生まれます。
タンパク質の結着が強まり、山口県独特の焼き抜き製法と合わさることで、他にはない弾力のある食感になります。
③銀紙が貼られた蒲鉾板
白銀の蒲鉾板には 銀紙(アルミ紙) が貼られています。
これは松の木の香りが蒲鉾に移らないようにという創業者の気遣いから始まったもの。
結果的に蒲鉾が板から剥がしやすくなり、お客様からも好評の“白銀ならでは”の特徴になっています。


取材後記
援むすび山口 地産地消プロデューサーより
防府市民にとって「白銀」は、あまりにも身近な存在です。
だからこそ、その背景にある物語を改めて知る機会は、意外と少ないのかもしれません。
今回、杉本利兵衛本店を訪ね、四代目の 杉本洋右社長にお話を伺いました。
取材が始まると、社長の軽快な語り口に引き込まれ、予定していた時間はあっという間に過ぎていきました。気がつけば、蒲鉾の話から防府の歴史、山口県の食文化、さらには地域の未来の話まで、次々と話題が広がっていました。
杉本社長の言葉には、どこか温かさがあります。
自社の歴史や技術を誇りながらも、それを声高に語るのではなく、どこか照れくさそうに、しかし楽しそうに話してくださる姿が印象的でした。100年以上続く店の四代目としての責任と、地域の文化を守り続ける人の静かな覚悟。その両方を感じる時間でもありました。
外務大臣・松岡洋右が名付けた「白銀」という名前の由来。
山口県独自の焼き抜き蒲鉾という文化。
そして、創業者の気遣いから生まれた、かまぼこ板の銀紙の話。
どれも、ただ蒲鉾を食べているだけでは気づかない物語です。
しかし、その背景を知ったあとに食べる白銀は、これまでとは少し違った味に感じられるから不思議です。
援むすび山口が大切にしている言葉があります。
「知ると好きになる。知ると美味しくなる。好きになると、逢いに行きたくなる。」
今回の取材は、まさにその言葉を実感する時間でした。
防府のまちで生まれ、
100年以上愛され続けてきた蒲鉾「白銀」。
その一本には、防府という土地の歴史と、人の想い、そしてそれを今も守り続ける杉本社長の人柄が、静かに込められていました。
そしてきっと、この白銀の物語は、
これからも防府のまちとともに続いていくのだと思います。


「白銀本舗 杉本利兵衛本店 人気商品詰め合わせセット」3名様 にプレゼント!
防府の老舗かまぼこ店
白銀本舗 杉本利兵衛本店より、人気商品を詰め合わせた
かまぼこセットを3名様にプレゼント!
山口県を代表する名品「白銀」をはじめ、
彩り豊かな「海陽」、ふんわりとした味わいの「きみの幸」など、
杉本利兵衛本店こだわりのかまぼこを詰め合わせた特別セットです。
職人の技で丁寧に作られる、上品でやさしい味わい。
山口の食文化を感じる老舗の味を、ぜひご家庭でお楽しみください。


応募は「援むすび山口 公式LINE」から
友だち追加後に表示される応募フォームよりご応募ください。

山口県の「地産地消」をもっと愉しもう!援むすび山口
投稿ご覧頂きありがとうございます
山口県の地産地消を愉しむためのWEBマガジンです。7つのカテゴリを通じて多くの人々に発信しています【 #農林水産物 #生産者 #観光スポット #特産品 #グルメ #ソウルフード #食育フードロス 】
◎ 山口県の「地産地消」をもっと愉しもう!
◎ 取材のご協力お願いします
◎ スポンサー募集中!
援むすび山口 事務局
〒751-0822 山口県下関市宝町5-1 有限会社デザインATOZ内
TEL 083-250-7724
——————————◎——————————
◎ 援むすび山口ホームページ[公式]
◎ プロダクションノート
◎ Instagram
◎ X
◎ TikTok@oh_enmusubi
◎ ヤスベェの援むすびチャンネル
——————————◎——————————
#山口県 #19市町
[西部] #下関市 #山陽小野田市 #宇部市
[北部] #長門市 #美祢市 #萩市 #阿武町
[中部] #防府市 #山口市
[東部] #周南市 #下松市 #光市 #田布施町 #平生町 #上関町 #柳井市 #岩国市 #和木町 #周防大島町