取材日:2026年2月10日
聞き手/ヤスベェ応援団長(大谷泰彦さん)
取材・文・撮影/援むすび山口編集長・地産地消プロデューサー 重村光寛

①援むすび山口地産地消インタビュー!
「住みやすい町なんですよ」という言葉の奥にあるもの

ヤスベェ応援団長が「田布施町はどんな町ですか」と問いかけると、
東浩二町長は少し間を置いてから、静かに「住みやすい町なんですよ」と答えました。
この言葉は一見すると特別な表現ではありませんが、話を聞き進めるうちに、その中にこの町の本質が含まれていることに気づかされます。瀬戸内海に面し、山があり、田んぼが広がり、周南や岩国といった都市へも無理なく通える距離にある田布施町は、都会の利便性と地方の穏やかさを無理なく共存させながら、どちらにも偏りすぎないバランスを保っています。結果として人口は大きく増えもせず減りもせず、大きな災害もほとんどないという、静かな安定が長い時間をかけて続いてきました。
「昔から人口があまり変わってないんですよね。合併したときが16,500人くらいで、ちょっと前まで1万4千人くらいだから、70年間で2,000人くらいしか減ってないんですよ。だから、住みやすいんだと思いますよ」
この言葉は単なる事実の説明ではなく、この町が長い時間をかけて整えてきた暮らしの完成度を示しているように感じられました。


暗闇の中で触れて判断するという仕事

いちじくの話題になると、東町長の語り口は明らかに変わり、行政の長としての視点ではなく、一人の生産者としての感覚がそのまま言葉に乗ってくるのが印象的でしたが、その理由はシンプルで、町長自身が実際にいちじく栽培に関わっていた経験を持っているから……
「朝3時からですよ。真っ暗な中でね、もぐんですよ」
まだ光の届かない時間帯、畑の中でいちじくを収穫する作業は、視覚ではなく触覚に頼る仕事になります。「色が分からないんですよ。真っ暗だから全部黒に見えるから、手で触って判断するんですよ。柔らかすぎてもいかんし、硬くてもいかんし」
その一つひとつの判断は、長年の経験によって積み重ねられた感覚の結果です。「これはどうかなっていうのは食べるんですよ。でもね、美味しいのは出荷するじゃないですか。だから自分が食べるのは、あんまり美味しくないやつばっかり(笑)」
ヤスベェ応援団長が「それは本当にやっていた人の話ですね」と返したとき、このやり取りの中に、言葉の重みとリアルがそのまま表れていると感じました。


「ここに来て食べてもらうしかないんですよ」

いちじくの話は、そこからさらに核心へと進みます。
「東京には持っていけないんですよ。腐っちゃうから」完熟したいちじくは非常に傷みやすく、長距離輸送には向きません。そのため市場に広く流通させることが難しいという現実があります。
「朝2時とか3時に一番温度が低いときに取って、パックに入れて持っていっても、広島が限界ですね」
この言葉を受けてヤスベェ応援団長が「じゃあ来てもらうしかないですね」と言うと、町長はすぐに「そうなんですよ。ここに来て食べてもらうのが一番美味しい」と答えました。
いちじくはどこでも買える商品ではなく、その場所で食べて初めて価値が成立する食べ物であるということが、このやり取りの中ではっきりと伝わってきます。
さらに、いちじくの成熟をコントロールする話へと続きます。「いちじくって、いつ赤くなるか分からないんですよ。でもね、刺激を与えると1週間で真っ赤になるんですよ」収穫のタイミングをずらしながら出荷していくことで、品質と価格を保つ工夫がなされていることも見えてきます。


「漁師より奥さんの方が売上がいいんですよ」
地産地消の話題では、印象的な一言がありました。
「漁師より奥さんの方が売上がいいんですよ(笑)」一見すると冗談のようにも聞こえますが、その中には明確な意味があります。漁師が獲ってきた魚を地域の女性たちが加工し、販売することで価値が高まるという構造です。
ヤスベェ応援団長が「価値が変わる瞬間ですね」と返したこの場面は、地域経済の本質を端的に表していました。単に作るだけではなく、どう届けるかによって価値が変わるという現実が、日常の中で自然に成立しているのです。


「何もないんですよ。でもそれがいい」

馬島の話になると、会話の空気が少し和らぎます。
「何もないんですよ。でもそれがいいんです」
田布施町の沖に浮かぶ馬島は、本土の麻里府港から公営渡船で約10分という距離にありながら、日常とは少し違う時間が流れる場所です。平安時代には馬を飼育する牧場として利用され、「馬飼い島」と呼ばれていたことが名前の由来ともいわれています。
水が限られているため大きな設備を整えることができず、不便さも残る島ですが、その環境そのものが価値になっています。一方で、島内には「のんびらんど・うましま」と呼ばれるキャンプ場が整備されており、テントサイトやキャビン、炊事場、シャワー室などが揃い、気軽に自然の中で過ごせる環境も用意されています。
「スマホも何もない中で過ごす時間を求めて来るんですよ」
ヤスベェ応援団長が「宇宙に行ったような感じですよね」と言うと、「そうです、それです」と町長が即座に応じた場面は、言葉以上に体験としての価値を共有している印象が残りました。


なぜ、この町から人が育つのか
田布施町は、岸信介、佐藤栄作という二人の総理大臣を輩出している町として知られています。
その理由について尋ねると、町長は「優秀な人が努力された結果だと思います」と静かに答えました。
特別な仕組みや制度があるわけではないという前提の中で、続けて語られた言葉が印象的でした。
「あとね、排除しないんですよ、この町は」
価値観や考え方の違いを受け入れる風土があり、それが人の成長を支えているのではないかという視点が示されます。ヤスベェ応援団長が「環境ですね」と応じると、町長も静かに頷いていました。


「おむつを配るためじゃないんです」


子育て政策の話では、このインタビューの中でも特に印象的なやり取りがありました。
「おむつ定期便ってありますけどね、あれはおむつを配るためじゃないんです」
ヤスベェ応援団長が驚いた様子で問い返すと、町長ははっきりと答えます。
「顔を見るためなんですよ」
職員が直接家庭を訪問することで、保護者の表情や声の変化に気づくことができる仕組みになっているのです。「先月は明るかったのに、今月はなんか違うな、とかね」
相談に来ることが難しい家庭に対して、こちらから関わっていくという姿勢が、この制度の根底にあります。

② 東浩二町長ぶっちゃけインタビュー
「やっぱり“人”なんですよね」
今回の取材の中で、もっとも東町長らしさがにじみ出ていたのが、このぶっちゃけインタビューでした。行政の立場として語られる言葉とは違い、そこにあったのは一人の人間としての素直な言葉であり、その何気ないやり取りの中に、田布施町という町の空気や人柄がそのまま表れているように感じられました。

「なんでもいいんですよ(笑)」というスタンス
好きな食べ物について尋ねると、東町長は少し笑いながらこう答えます。
「なんでも食べますし、お酒もなんでも飲めますからね」
いわゆる“これが一番好きです”という強いこだわりを前面に出すタイプではなく、その場その場で自然に楽しむスタイルであることが伝わってきます。ただ、そのあとに続いた一言が印象的でした。
「山口県のかまぼこは美味しいですよね」
特に長門のかまぼこが好きだという話からは、派手なグルメではなく、地元の日常の中にある本当に良いものをきちんと知っている人だという印象を受けます。特別なものを誇るのではなく、当たり前の中にある価値をちゃんと理解している、その感覚がとても自然です。


思い出に残るのは、町中華の一皿
話は自然と、思い出の味へと移っていきます。
「山華さんっていう中華料理屋があってね、チャーハンと酢豚が美味しかったんですよ」
今はもう無くなってしまったお店だそうですが、その名前を口にしたときの表情がやわらかく、どこか懐かしさを含んでいたのが印象的でした。
「ちょっと高かったんですけどね。でも、チャーハンの上に酢豚をのせて」
その一言だけで、当時の情景が浮かび上がってくるような、不思議なリアリティがあります。豪華でも流行でもない、けれど忘れられない一皿。こういう話の中に、その人の原点や価値観が自然と表れるものだと改めて感じました。


「実はやってたんですよ」という軽やかさ
さらに話を聞いていくと、意外な一面が次々と出てきます。
「バンドやってましたよ」ジャンルはサザンオールスターズ。少し照れたように笑いながら、「練習は嫌いだったんですけどね」と続きます。この一言で場の空気が一気に和らぎ、完璧を求めるよりも、楽しむことを大事にしてきた人なのだと感じさせます。
さらに、「釣りもね、毎日行ってましたよ」という話に続き、
「一匹釣ったら帰ろうと思ってたら、結局釣れんかった(笑)」というエピソードが出てきます。成果のない時間すら、どこか楽しんでいるような軽やかさがあり、こういう“無駄に見える時間”をちゃんと持ってきた人の強さを感じます。


今も変わらない「手を動かす日常」
現在の過ごし方について聞くと、答えはとてもシンプルでした。
「木を切ったり、草刈りしたり、DIYですね」
さらに、「朝5時くらいから出て、水やったり、木を切ったりしてますよ」
と、ごく当たり前のように続きます。
町長という立場でありながら、日常の中で手を動かすことが自然に組み込まれている。この感覚は、いちじくの話ともどこか重なります。頭で考えるだけではなく、自分の手で触れ、動かしながら物事を捉えていく姿勢が、日常の中にしっかりと根付いているのです。


自然体であることの強さ
今回のぶっちゃけインタビューを通して見えてきたのは、強い個性を前面に押し出すタイプではなく、日常の延長線上で自然に生きている人の姿でした。
なんでも食べる。
なんでも楽しむ。
無理をしない。
そうした一つひとつはとてもシンプルですが、それを積み重ねてきた人にしか出せない“余裕”のようなものがありました。
特別なことを語らなくても、言葉の端々から伝わってくるものがある。
それが東町長の人柄であり、そのまま田布施町の空気にもつながっているように感じます。
このインタビューの中で見えたのは、派手さではなく、静かな強さでした。

③ 日本で唯一?兄弟で総理大臣を輩出した町・田布施町トリビア
山口県田布施町は、人口規模からは想像できない歴史を持っています。それが、「兄弟で総理大臣を輩出した町」という事実です。

二人の総理大臣の功績
田布施町から生まれたのが、
・岸信介
・佐藤栄作
の二人です。
岸信介は戦後日本の復興期において、日米関係の基盤となる安全保障体制を築き、日本の進むべき方向性を大きく決定づけた政治家です。
一方、佐藤栄作は高度経済成長期の総理大臣として長期政権を担い、沖縄返還を実現するとともに、非核三原則を掲げたことでノーベル平和賞を受賞するなど、日本の国際的な立場を大きく前進させました。
同じ町から生まれた“兄弟総理”
特筆すべきは、この二人が実の兄弟であるという点です。
同じ家庭環境、同じ地域で育った二人が、それぞれ日本のトップに立ったという事実は、日本の政治史の中でも極めて珍しい出来事です。
人口の少ない一つの町から、しかも兄弟で総理大臣が誕生したという背景には、単なる偶然ではなく、田布施町という土地が持つ環境や文化が大きく関係していると考えられます。


取材後記|援むすび山口編集長/地産地消プロデューサーより

今回の田布施町の取材で、改めて感じたことがあります。
それは、「価値はつくるものではなく、引き出すもの」だということです。
いちじくの話は、その象徴でした。
正直に言えば、いちじくは全国どこでもある果物です。
でも、田布施町のいちじくは違う。
「東京には持っていけない」
「ここに来て食べるしかない」
この一言で、価値が一気に変わる。
流通できない弱点が、“ここでしか食べられない理由”になる。
さらに、東町長自身がいちじくをつくっていたという事実。
朝3時から収穫し、手で触れて判断する。
このリアルがあるからこそ、言葉に説得力がある。
いちじくはまだ完成していない。でも、だからこそ可能性がある。
やり方次第で、田布施町を代表する「体験型のブランド」になる。
そう確信しました。
そして、もう一つ強く感じたのが、田布施町という“土地の力”です。
岸信介、佐藤栄作という二人の総理大臣を輩出した町。
普通なら「すごいですね」で終わる話です。
でも、今回の取材で見えたのはそこではありません。
穏やかな環境。
排除しない文化。
人を急がせない空気。
この町には、人が育つ“土壌”がある。
無理に競わせない。
無理に結果を求めない。
でも、ちゃんと育つ。
それが結果として、あの二人につながっているのではないかと感じました。
そして最後に、東町長の人柄です。
今回の取材で一番印象に残ったのは、子育て政策の話ではありません。
その前にあった「お母さんの話」です。
一人で暮らしていたお母さんが、ご飯を食べなくなった。
だから、自分が帰って一緒にご飯を食べる。
ただそれだけのことを、ずっと続けていた。
一緒に食べると、お母さんはご飯を食べる。
この話を聞いたとき、すべてがつながりました。
おむつ定期便も同じです。
おむつを配ることが目的ではない。
“会うこと”が目的。
顔を見る。
声を聞く。
変化に気づく。
制度ではなく、関係性。この発想は、机の上からは絶対に生まれない。
人と向き合ってきた人間の発想です。
今回の田布施町の取材を一言で表すなら、「静かに強い町」です。
派手ではない。でも、すべてがちゃんと回っている。
そして何より、人も、食も、時間をかけて育てている。
この町は、急がない。
でも、確実に前に進んでいる。
だからこそ、これから面白くなる。そう思わせてくれる取材でした。


田布施町より、素敵なプレゼントをいただきました!

田布施町より読者プレゼントをご提供いただきました。
田布施町公式マスコット「タブちゃん」のぬいぐるみとアクリルスタンドをセットで、抽選で1名様にプレゼントいたします。
タブちゃんは、町名の「タブセ」と、特産品である“イチジク”をモチーフにしたキャラクター。ころんとしたフォルムが愛らしいぬいぐるみと、デスクやお部屋に飾りやすいアクスタは、田布施町のやさしさを感じられるアイテムです。
記事を通して知った田布施町の魅力とともに、ぜひお手元でも“タブちゃん”のぬくもりをお楽しみください。ご応募お待ちしております。
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