取材日:2026年4月20日
聞き手・取材・文・撮影/援むすび山口編集長・地産地消プロデューサー 重村光寛
今回のゲスト・協同組合 田布施地域交流館 理事長 勝岡康英さん


山口県の地産地消をもっと愉しもう。
援むすび山口の地産地消プロデューサーとして、今回は田布施町からのご紹介で、協同組合 田布施地域交流館を訪ねました。
お話を伺ったのは、理事長の勝岡康英さん。正直に言うと、田布施地域交流館と聞いて、最初に思い浮かぶのは「地元の野菜が並ぶ直売所」というイメージかもしれません。
でも、実際に話を聞いてみると、ここはただの直売所ではありませんでした。

野菜がある。
魚がある。
惣菜がある。
お菓子がある。
カフェがある。
桜がある。
そして、何より“人”がいる。

田布施地域交流館は、田布施町の食と暮らしがぎゅっと集まった、地域の入口のような場所でした。

協同組合 田布施地域交流館・理事長 勝岡康英・さくらみち


買い物に来たはずなのに、人に会いたくなる場所

田布施地域交流館は、地元の農産物を中心に販売する直売所です。

勝岡理事長も、まずは「直売所ですね」と話されました。

店内には、地元で採れた野菜をはじめ、果物、鮮魚、惣菜、お弁当、お菓子などが並びます。さらに、館内には「惣菜工房たぶせ」と「菓子工房たぶせ」もあり、ここで作られるお弁当やういろうなども人気です。

これだけ聞くと、「地元のものが買える場所」なのですが、田布施地域交流館の魅力はそれだけではありません。

名前に“交流館”とある通り、ここは地域の人が集まり、会話が生まれる場所でもあります。

地元の方が買い物に来る。
生産者が商品を出しに来る。
スタッフさんとお客様が言葉を交わす。
生産者向けの講習会も行われる。

つまり、田布施地域交流館は「モノを売る場所」でありながら、「人がつながる場所」でもあるのです。

買い物に行ったはずなのに、誰かと話して帰る。
そんな温度が、この場所にはありました。


山口県でイチジクといえば、田布施を忘れてはいけない

「田布施らしい農林水産物は何ですか?」

そう尋ねると、勝岡理事長からすぐに出てきたのが、イチジクでした。

田布施町では、昭和40年代前半からイチジクの栽培が始まったそうです。農林事務所や地元農協、町が関わり、地域の特産品として育ててきた歴史があります。

そして、田布施のイチジクの魅力は、何といっても鮮度。

イチジクはとても繊細な果物です。
遠くへ運ぶよりも、採れたてをできるだけ早く味わうことに価値があります。

田布施地域交流館では、農家さんが朝に収穫したイチジクが選果場へ運ばれ、それを交流館が取りに行き、店頭に並べる流れがあるそうです。

つまり、田布施のイチジクは「田布施で食べるからこそ美味しい」果物。

これ、かなり大事です。

有名だから食べるのではなく、
その土地で採れたものを、その土地に近い場所で味わう。

これこそ、地産地消の醍醐味です。

イチジクの時期は、だいたい7月上旬から10月中旬頃まで。
田布施の夏から秋にかけて、これはしっかり覚えておきたい味です。

協同組合 田布施地域交流館・理事長 勝岡康英・さくらみち


「自分たちで値段をつけて売る」そこから直売所は始まった

田布施地域交流館ができて、すでに25年以上。

勝岡理事長は、立ち上げ当時の詳しい経緯については「はっきりとはわからない」としながらも、直売所が生まれた背景について、とてもわかりやすく話してくださいました。

昔は、農家さんが野菜を市場へ持って行っても、自分で値段を決められるわけではありませんでした。

自分では「これは100円の価値がある」と思っていても、市場では50円になることもある。

それなら、自分たちで値をつけ、自分たちの地域で売れる場所があった方がいい。

その考え方が、直売所の原点にあるのではないか。

この話を聞いて、直売所を見る目が少し変わりました。

直売所は、ただ安く野菜を売る場所ではありません。
生産者が自分の作ったものに責任を持ち、お客様と直接つながる場所です。

だから、棚に並んでいる野菜には、値段だけでなく、生産者の覚悟も並んでいる。

そう思うと、いつもの買い物が少し楽しくなります。

協同組合 田布施地域交流館・理事長 勝岡康英・さくらみち


美味しさは、土地と鮮度と“正直さ”から生まれる

田布施の食材は、なぜ美味しいのか。

勝岡理事長のお話から見えてきたのは、「土地」「鮮度」「人の手間」です。

田布施町には、山があり、田んぼがあり、海があります。
大きな工業地帯があるわけではなく、自然環境の良さもある。

果物にとって大切な日当たり。
野菜や米にとって大切な土と水。
魚にとって大切な海。

その環境の中で育ったものが、採れたてで店頭に並ぶ。

これだけでも十分に魅力があります。

さらに田布施地域交流館には、田布施漁協から届く鮮魚もあります。季節によって、ヒラメやコウイカなどが並ぶこともあり、小さな魚は天ぷらにしやすいように下処理されて出されることもあるそうです。

こういうひと手間が、うれしい。

「地元の魚はいいよ」と言われても、料理しにくいと手が出にくい。
でも、すぐに使える形にしてくれていれば、買ってみようかなと思えます。


「あの人の野菜だから買う」名前で選ばれる直売所

田布施地域交流館には、多くの生産者が関わっています。

勝岡理事長は、特に70代、80代の生産者の方々には、交流館に対する強い愛情があると話してくださいました。

自分が作った野菜が店頭に並ぶ。
誰かがそれを手に取る。
買ってくれる。
また次も出そうと思う。

これは、ただの販売ではありません。
生産者の元気にもつながる循環です。

一方で、勝岡理事長は、生産者と消費者の感覚の違いについても、はっきり話してくださいました。

生産者にとって、自分が手塩にかけて作ったものには愛着があります。
できれば高く売りたい。
その気持ちは当然です。

でも、直売所で大切なのは「自分が売りたい値段」だけではありません。

自分がお客様だったら、その値段で買うか。
その量で納得するか。
その品質で喜んでもらえるか。

勝岡理事長は、そうした視点を大切にされてきました。

印象的だったのは、「お客様を裏切ってはいけない」という話です。

傷のある野菜を隠して売るのではなく、きちんと見えるようにする。
そのうえで、お客様が納得して買えるようにする。

直売所は、生産者の名前が見える場所です。

「あの人の野菜だから買う」
「あの人のものは美味しかった」
「またあれを買いたい」

そんな信頼が生まれる一方で、一度裏切れば、その信頼は失われます。

直売所の棚に並んでいるのは、野菜だけではありません。
生産者とお客様の信頼も、一緒に並んでいるのです。


地元の買い物の場所から、SNSで行きたくなる場所へ

田布施地域交流館に来られるお客様は、地元や近隣市町の方が中心です。

年配の方も多く、日常の買い物の場所として利用されてきました。以前は、岩国、周南、下松方面から来られるお客様も多かったそうです。

しかし最近は、ガソリン代の高騰や、近隣にも直売所が増えたことなどにより、お客様の動きにも変化が出ています。

一方で、新しい来館理由も生まれています。

それが、カフェ「さくら道」です。

ここでは、地元の農産物を使ったパフェなどが提供されています。中でも人気なのが、完熟イチゴを使った「いちごだらけ」。

名前からして、もう気になります。

この「いちごだらけ」はSNSでも注目され、広島方面など遠方から訪れるお客様もいるそうです。

そして、イチゴの季節が終わると、今度はイチジクの季節へ。

地元で採れた果物を、ただ販売するだけでなく、カフェで味わえるメニューにする。

これがいいのです。

「買いに行く」だけではなく、
「食べに行く」理由になる。

そして、SNSで見た人が、
「ちょっと田布施まで行ってみようかな」と思う。

田布施地域交流館は、地元の暮らしを支える場所でありながら、外から人を呼び込むきっかけにもなっています。

さらに、田布施川の桜も大きな魅力です。

川があり、桜があり、広い駐車場がある。
勝岡理事長は、それもこの場所の魅力だと話されました。

桜の時期に田布施地域交流館へ行き、
直売所で買い物をして、
カフェで季節の味を楽しみ、
田布施川沿いを少し歩く。

これは、かなり良い休日の過ごし方です。


華やかさの裏側にある、直売所のリアル

もちろん、良いことばかりではありません。

勝岡理事長は、田布施地域交流館が抱える課題についても、率直に話してくださいました。

人口減少。
高齢化。
出荷者の減少。
燃料費の高騰。
近隣直売所との競合。
そして、価格への考え方の変化。

協同組合 田布施地域交流館・理事長 勝岡康英・さくらみち

かつて毎日のように来ていたお客様も、10年経てば年齢を重ねます。
生産者も同じように年齢を重ね、出荷できる量が減っていきます。

これは田布施地域交流館だけの問題ではありません。
地方の直売所、農業、地域経済が抱えている共通の課題です。

それでも勝岡理事長が何度も大切にされていたのは、直売所の原点でした。

直売所は、まず消費者に喜んでもらう場所。
その喜びが、生産者に返ってくる場所。

自分たちが先に喜ぶのではなく、買う人に喜んでもらう。
その結果として、自分たちにも返ってくる。

これは、商売の話でありながら、地域づくりの話でもあります。

「地元のものだから買ってください」では続かない。
「ここで買いたい」と思ってもらえる理由をつくらなければいけない。

田布施地域交流館の課題は、これからの地産地消を考えるうえでも、とても大事なヒントだと感じました。


協同組合 田布施地域交流館・理事長 勝岡康英・さくらみち

農業で始まり、農業で終わる。勝岡理事長の人生そのもの

これから田布施地域交流館は、どんな場所になっていくのでしょうか。

勝岡理事長は、今後、若い世代に変わることで、考え方も変わっていくだろうと話されました。

それが良い方向に進むのかどうかは、やってみなければわからない。

でも、地域も、農業も、直売所も、ずっと同じままではいられません。

勝岡理事長ご自身は、これからも出荷者の立場で、良いものを出していきたいと語られました。

もともと専業農家として農業に携わり、その後、農協で営農指導員として農家を支える立場となり、そして田布施地域交流館の運営に関わってきた勝岡理事長。

「農業で始まり、農業で終わるのが理想」

その言葉が、とても印象に残りました。

農業を通じて人と出会い、農業を通じて地域と関わり、農業を通じて人に支えられてきた。

田布施地域交流館の話を聞いているようで、実は勝岡理事長の人生を聞いていたのかもしれません。


ぶっちゃけインタビュー

勝岡理事長、話が面白すぎました

ここからは、少し肩の力を抜いて、勝岡理事長の素顔にも触れていきます。

まず、今食べたいものとして出てきたのが、アサリの味噌汁。

子どもの頃は、アサリの匂いが苦手だったそうです。
ところが、年齢を重ねた今は、アサリの味噌汁が無性に食べたくなる。

昔は苦手だった味が、いつの間にか懐かしい味になる。

この感じ、わかる人も多いのではないでしょうか。

思い出の味としては、お祭りのたい焼きの話も出てきました。

神社やお宮のお祭りで食べたたい焼き。
特別な料理ではないかもしれません。
でも、子どもの頃の記憶と一緒に残っている味は、やっぱり強い。

おススメの観光スポットは、シーサイド上関の塩風呂から見る夕陽。
残念ながら今は閉業してしまった施設ですが、ここから見る夕陽は最高だったそうです。

そして趣味は、魚釣り。

平郡島や八島のあたりへ船で出て、メバル、ハマチ、タイ、ヒラメなどを釣ることもあるそうです。

ご自身では「気が短い」と笑いながら話されていましたが、魚釣りの話になると、これがまた楽しそう。

さらに、ゴルフの話も出てきました。

始めたきっかけ、仲間とのつながり、同級生とのコンペ。
どの話にも、勝岡理事長らしいユーモアがにじんでいました。

厳しいことは、はっきり言う。
でも、話していると笑ってしまう。
どこか憎めない。
そして、人をつなぐ力がある。

田布施地域交流館の温かさは、こうした勝岡理事長の人柄にも支えられてきたのだと思います。

協同組合 田布施地域交流館・理事長 勝岡康英


山口直送!トリビアな話

田布施町は、食だけじゃない。古い歴史が静かに眠る町

勝岡理事長との会話の中で出てきたのが、田布施町に眠る“古い歴史”の話でした。

「古墳が多いところじゃありますよね」

そう話された勝岡理事長の言葉が、とても印象に残りました。

古墳があるということは、そこに古くから人の営みがあり、地域の中で大切な役割を持った人たちがいたということ。

今、田布施地域交流館に野菜や果物が集まり、人が集まり、会話が生まれているように、田布施町には昔から、人が集まり、暮らしをつくってきた歴史があるのかもしれません。

さらに話題に上がったのが、石城山。

石城山は、光市と田布施町にまたがる山で、国の史跡に指定されている神籠石が残る場所として知られています。神籠石は、7世紀ごろに築かれた古代山城跡といわれていますが、誰が何の目的でつくったのか、まだはっきりとはわかっていない部分もあるそうです。

つまり、田布施町には、ただ古いだけではなく、まだ想像の余地がある歴史が眠っているのです。

直売所でイチジクを知る。
カフェで季節の味を楽しむ。
田布施川の桜を眺める。
そして少し視線を上げると、古墳や石城山のような歴史にもつながっていく。

田布施町は、食から入って、歴史まで愉しめる町なのかもしれません。

知ると好きになる。
知ると美味しくなる。
好きになると逢いに行きたくなる。

田布施地域交流館を訪れたあと、少しだけ田布施町の歴史にも目を向けてみると、この町の見え方が、もう一段深くなるはずです。


取材後記|援むすび山口編集長/地産地消プロデューサー

田布施地域交流館は、“人の温度”が見える場所でした

今回、田布施地域交流館で勝岡康英理事長のお話を伺って感じたのは、ここは単なる直売所ではないということです。

野菜や果物、魚、惣菜、お弁当、お菓子が並ぶ場所。
でも、その奥には必ず“人”がいました。

作る人がいて、選ぶ人がいて、売る人がいて、また買いに来る人がいる。
その小さなやり取りの積み重ねが、田布施地域交流館の魅力なのだと思います。

勝岡理事長のお話は、とても率直でした。
直売所の良いところだけでなく、生産者の高齢化、価格の難しさ、お客様との信頼関係など、現場のリアルも包み隠さず話してくださいました。

特に印象に残ったのは、
「自分が売りたい値段」ではなく、
「お客様だったらどう感じるか」
という考え方です。

生産者が一生懸命作ったものを、お客様が納得して買う。
そして「また買いたい」と思う。
その信頼があるからこそ、直売所はただの販売所ではなく、交流の場になるのだと感じました。

勝岡理事長は、厳しいこともはっきり言われます。
でも、どこか笑ってしまうようなユーモアがあり、話しているうちに人柄に引き込まれていきました。

田布施地域交流館には、田布施の食だけでなく、田布施の人の温度があります。

知ると好きになる。
知ると美味しくなる。
好きになると逢いに行きたくなる。

今回の取材は、その言葉を改めて実感する時間でした。


「田布施のお米5㎏」 を3名様にプレゼント!

協同組合 田布施地域交流館・理事長 勝岡康英・さくらみち

田布施町地域交流館より、読者プレゼントをいただきました。

今回は、田布施のお米5kgを3名様にプレゼントいたします。

直売所ならではの魅力は、なんといっても、生産者さんの顔が見える安心感。
田布施の自然の中で大切に育てられたお米は、毎日の食卓にそっと寄り添う、地域の美味しさそのものです。

炊きたての香り、ふっくらとした食感、そして地元で育ったお米ならではの味わいを、ぜひご家庭でお楽しみください。


応募は「援むすび山口 公式LINE」から
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