取材日:2026年6月30日
聞き手・取材・文・撮影/援むすび山口編集長・地産地消プロデューサー 重村光寛
今回のゲスト・公益社団法人 山口県光・熊毛地区栽培漁業協会
光・熊毛地区栽培漁業センター 谷村誠児事務局長


光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー

上関町の海を訪ねると、ただ美しいだけではない、もうひとつの海の姿が見えてきます。

魚を獲る海。
車海老を育てる海。
そして、未来のために命を育て、もう一度海へ返す海。

今回、援むすび山口の地産地消プロデューサーとして訪ねたのは、光・熊毛地区栽培漁業協会、光・熊毛地区栽培漁業センターです。

お話を伺ったのは、谷村事務局長。

取材の冒頭から、いきなり驚かされました。
目の前に並んでいたのは、上関車海老を使った料理の数々。しかも、今回の取材のために初めて用意してくださったもので、すべて谷村事務局長が自ら腕を振るってくださった料理でした。

お刺身、寿司、フライ、カレー、焼き物。

どれもただ美味しいだけではなく、上関車海老への愛情が込められていることが伝わる料理でした。

食べて、聞いて、見て、感じる。
今回の取材は、まさに援むすび山口らしい地産地消インタビューになりました。


① 援むすび山口地産地消インタビュー!

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー

上関の海は、獲るだけの海ではない。育て、守り、未来へつなぐ海である。

光・熊毛地区栽培漁業センターの役割を、谷村事務局長はとても分かりやすく話してくださいました。

ひとつは、海を豊かにするために、魚の稚魚を育てて放流する事業。
もうひとつは、その放流事業を続けるための資金をつくるために、車海老を養殖する事業です。

一般的に「漁業」と聞くと、魚を獲る仕事を思い浮かべます。

しかし、光・熊毛地区栽培漁業センターで行われているのは、魚を獲る前の仕事です。

人間が海の恵みをいただく以上、その資源を守り、育て、未来へつないでいく必要がある。
そのために、小さな稚魚を一定の大きさまで育て、海へ放流する。

これが「つくり育てる漁業」です。

正直に言うと、私自身も、魚は自然の中で増えたり減ったりしているものだと思っていました。
しかし実際には、そこに人の手が入り、知恵が入り、努力が入っている。

海の資源は、ただ自然に任せているだけでは守れない。
そこに気づかされた取材でした。

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー


稚魚を育てる仕事は、命を海へ返す仕事

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー

センターでは、マダイ、ヒラメ、トラフグ、キジハタ、サザエ、アカウニ、クルマエビなど、さまざまな魚介類の中間育成や放流に関わっています。

中間育成とは、小さな稚魚をすぐに海へ放すのではなく、ある程度生き残れる大きさまで人の手で育てることです。

例えば、マダイであれば小さな稚魚を育て、放流できるサイズにして海へ送り出します。

ただし、育てれば終わりではありません。

谷村事務局長が強調されていたのは、「元気な状態で放流すること」と「どこに放流するか」がとても大切だということでした。

海へ出た稚魚たちは、今まで外敵のいない環境で育っています。
そこから自然界へ出ると、すぐに大きな魚に食べられてしまう危険もある。

だからこそ、放流する時期、場所、水の流れ、外敵の少なさまで考える。
ただ海に放すのではなく、少しでも長く生きられる場所へ送り出す。

この話を聞いたとき、「放流」という言葉の印象が変わりました。

それは単なる作業ではありません。
小さな命を、未来の海へ送り出す仕事です。


上関の海が育てるもの

上関町の海は、栽培漁業にとって非常に大切な環境です。

光・熊毛地区栽培漁業センターの本所は、長島と室津半島に挟まれた海峡沿いにあります。
潮の流れがあり、干満によって海水が動くため、きれいな海水を使うことができます。

谷村事務局長は、上関の海について「きれいな水が常に使える環境にある」と話されていました。

これは稚魚の育成にも、車海老の養殖にも、とても大きな意味を持ちます。

地産地消という言葉は、よく「地元で獲れたものを地元で食べること」と説明されます。
しかし、援むすび山口としては、それだけでは足りないと考えています。

なぜ、この土地で育つのか。
なぜ、この味になるのか。
なぜ、この人たちがこの仕事をしているのか。

そこまで知って初めて、地産地消は物語になります。

上関車海老は、まさにその象徴でした。

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー


上関車海老は、なぜ美味しいのか

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー

上関車海老は、「甘みが強い」「雑味が少ない」と評価されています。

その理由を聞くと、単に海がきれいだから、だけではありませんでした。

養殖池の管理、砂の管理、水車による酸素供給、餌の管理、出荷前の状態管理。
そのすべてに、細かい手間がかけられています。

車海老は砂に潜る生き物です。
だから池の底の砂の状態が非常に大切になります。

シーズンが終わると、池の水を抜き、砂の上のゴミを取り、トラクターで砂を耕し、太陽の光で殺菌します。
また、生産中は潜水士の資格を持つ職員が実際に池の中を確認し、餌の残り具合や海老の状態を見ながら管理するそうです。

さらに、出荷前の餌にもこだわりがあります。
水温が下がる時期、車海老は動きが鈍くなり、餌を食べにくくなります。
しかし、出荷まで元気な状態を保つために、香りの強い餌を使い、しっかり体力をつけさせる。

そして、取り上げた海老はすぐに出荷するのではなく、一晩冷却水槽で寝かせます。
その間に、弱った海老と元気な海老を見極め、最後まで元気なものだけを出荷する。

美味しさの正体は、きれいな海と、徹底した管理と、最後まで手を抜かない姿勢でした。

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー


食べることが、海を守る応援になる

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谷村事務局長 インタビュー

今回の取材で最も重要だと感じたのは、上関車海老の販売収益が、稚魚の放流事業を支える仕組みになっていることです。

つまり、上関車海老は、ただの高級食材ではありません。

食べることで、上関の海を守る活動を応援できる。
買うことで、次の魚たちを育てる力になる。
贈ることで、上関の海の物語も一緒に届けることができる。

これは、援むすび山口が考える地産地消そのものです。

地元のものを食べる。
その背景を知る。
生産者の想いを知る。
そして、その消費が地域の未来につながる。

上関車海老は、まさに「食べる地産地消」から一歩進んだ、「海を守る地産地消」でした。

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谷村事務局長 インタビュー


上関の人に愛されてこそ、上関車海老になる

光・熊毛地区栽培漁業協会(栽培漁業センター )
谷村事務局長 インタビュー

谷村事務局長は、車海老を育てるだけでなく、「上関車海老」を地域の人たちに知ってもらうことにも力を入れています。

学校給食で車海老フライを提供したり、小学生がマダイや車海老に触れる体験学習を行ったり、地域のイベントで紹介したり。その活動は子どもから高齢者まで、町全体へと広がっています。

さらに、子どもたちにもっと親しんでもらおうと誕生したのが、ローカルヒーロー「上関車エビマン」です。
その正体は、なんと栽培漁業協会の職員。「車海老の妖精が生産者に乗り移った」というユニークな設定で、保育園の節分イベントに登場したところ、子どもたちに大人気になったそうです。顔を隠さないデザインには、「生産者が頑張っている姿を知ってほしい」という思いも込められています。
そこには、ただ商品を売るためだけではない想いがあります。

「子どもたちに、自分たちの町にはこんな海があることを知ってほしい。この海で命が育っていることを知ってほしい。そして、上関車海老を通して、自分の町に誇りを持ってほしい。」
そんな願いが、一つひとつの活動の根底にありました。

「上関車海老」という名前も、あえてストレートに「上関」を付けたそうです。
メディアで紹介されるたびに、「上関車海老」という言葉が広がる。それは商品名であると同時に、町の名前を届けることでもあります。
上関車海老が知られることは、上関町が知られることでもある。

谷村事務局長が目指しているのは、車海老を売ることではなく、車海老を通して町の未来を育てることなのだと感じました。

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② 援むすび山口ぶっちゃけインタビュー!

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谷村事務局長 インタビュー

谷村事務局長の山口愛を教えてください!

ここからは、谷村事務局長の人柄に迫る「ぶっちゃけインタビュー」です。

真面目な仕事の話から少し離れて、好きな食べ物、思い出の味、おすすめスポット、素顔について伺いました。

最近ハマっている山口の味は、海産物の橋本さんの鯖

谷村事務局長が最近ハマっているというのが、海産物の橋本さんの鯖の干物。

塩干しとみりん干しがあり、特に塩干しは、少し醤油をかけて食べるのが好きだそうです。

谷村事務局長は長門市仙崎のご出身。
魚や干物には、かなり食べ慣れているはずです。

その谷村さんが「めちゃくちゃうまい」と話す鯖。
しかも、ご自身がお世話になった方への贈り物にも使うほど気に入っているとのこと。

自分たちの車海老を大切な人に届けたいという気持ちと、良いものを誰かに贈りたくなる気持ち。
その感覚が、どこか重なっているように感じました。

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思い出のソウルフードは、長門の中華料理店「龍宝」の焼き飯

谷村事務局長の思い出のソウルフードは、長門市にある中華料理店「龍宝」の焼き飯。

チャーハンではなく、焼き飯。

醤油ベースの味わいで、見た目ほど濃すぎず、どこか中毒性のある味だそうです。
学生時代から食べていた、まさに地元の記憶と結びついた味。

食べると、あの頃を思い出す。
地元を思い出す。
そういう味こそ、本当の意味でのソウルフードだと思います。

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おすすめスポットは、海と花とふるさとの記憶

谷村事務局長が教えてくださったおすすめスポットは3つ。

ひとつ目は、平生町の丸山海浜パーク。
潮が高いときに歩道を歩くと、まるで海の上を歩いているような感覚になるそうです。ベンチに座って、ぼーっとするのにも良い場所とのこと。

ふたつ目は、田布施町の地域交流館周辺。
田布施川沿いの桜、イチジク、ブルーベリー、いちご、そして季節によっては牡蠣など、田布施らしい味と風景が楽しめる場所として紹介してくださいました。

三つ目は、光市の冠山公園。
特にバラ祭りが印象的だそうです。

その理由を聞くと、谷村事務局長のお父様はバラ農家だったとのこと。
子どもの頃、バラの仕事を手伝った記憶があり、バラを見ると家族や幼少期を思い出すそうです。

バラを育てる家に生まれ、今は海で命を育てる仕事をしている。

花から海へ。
形は違っても、「育てる」という感覚は、谷村事務局長の中にずっと流れているのかもしれません。

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谷村事務局長 インタビュー

谷村事務局長の素顔

谷村事務局長は、サッカー好き。
夜中に起きて試合を見ることもあるそうです。

休日は奥様とサウナに行き、数時間ゆっくり過ごすこともあるとのこと。
さらに、上関海峡マラソンにも参加し、バイクにも乗るという、かなりアクティブな一面も。

仕事では、海老と魚と海に向き合う谷村事務局長。
でも、その素顔は、家族を大切にし、地元の景色を愛し、体を動かすことも好きな、穏やかで温かい方でした。

だからこそ、話す言葉の一つひとつに、仕事への覚悟と、人としての優しさがにじんでいたのだと思います。


③ 中村店長の「山口直送!トリビアな話」を教えて下さい!

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上関車海老のエビ味噌は、脳みそではありません。

今回のトリビアは、上関車海老にまつわる豆知識です。

車海老を食べるとき、頭の中にある濃厚な部分を「エビ味噌」と呼びます。

この“味噌”という言葉のせいで、なんとなく「脳みそ」のように思っている方もいるかもしれません。

しかし、谷村事務局長によると、いわゆるエビ味噌は脳みそではなく、生物学的には肝臓と膵臓が一緒になったような器官、いわば“肝”にあたる部分だそうです。

だからこそ、濃厚な旨味がある。

フォアグラのように、肝の部分に旨味が詰まっていると考えると、あの濃い味わいにも納得できます。

さらに、車海老の名前の由来にもトリビアがあります。

車海老は、丸まったときの姿や体の模様が車輪のように見えることから、その名がついたと言われています。

そして、茹でると赤くなるのは、アスタキサンチンという色素が熱によって表に出てくるため。

知ると、ただの車海老ではなくなります。
知ると、頭の味噌までちゃんと味わいたくなります。
知ると、上関車海老がもっと美味しくなります。

これが、援むすび山口の「山口直送!トリビアな話」です。

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取材後記|援むすび山口編集長/地産地消プロデューサーとして

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今回の取材は、正直に言って、かなり長くなりました。

でも、これは仕方ありません。

愉しい取材は、どうしてもロングインタビューになります。
相手の話が面白い。
知らないことが次々に出てくる。
質問すると、また深い答えが返ってくる。
そうなると、こちらも止まれません。

今回の谷村事務局長の話は、まさにそうでした。

最初は、上関車海老の美味しさを聞く取材のつもりでした。
しかし話を聞いていくうちに、これは単なるグルメ取材ではないと分かりました。

上関車海老は、美味しい。
それは間違いありません。

でも、その美味しさの奥には、海を守る仕組みがありました。
稚魚を育て、海へ放流し、水産資源を未来へつなぐ仕事がありました。
その活動を続けるために、車海老を育て、販売し、収益を生み出す経営努力がありました。

つまり、上関車海老は「食べて終わり」の食材ではありません。

食べることで、上関の海を応援できる。
買うことで、稚魚の放流活動を支えることができる。
贈ることで、上関の海の物語を誰かに届けることができる。

これこそ、援むすび山口が伝えたい地産地消の形です。

そして今回、強く印象に残ったのは、谷村事務局長の「届ける」という意識でした。

良いものを育てる。
それだけでは終わらない。

知ってもらう。
食べてもらう。
ファンになってもらう。
そして、また選んでもらう。

この流れをきちんと考え、実践されていました。

一次産業の現場では、どうしても「良いものをつくる」ことに全力が注がれます。
もちろん、それは最も大切なことです。

しかし、良いものは、伝わらなければ選ばれません。
選ばれなければ、続けることが難しくなります。

谷村事務局長の話を聞きながら、私は「ここには、生産者であり、経営者であり、伝え手でもある人がいる」と感じました。

取材の最後には、上関車海老が大切に育てられている池へ。

中村店長もボートに乗って、餌あげ体験をさせていただきました。
池の上で、実際に車海老が育っている場所を見ながら感じたのは、ここにいる一尾一尾が、ただの商品ではないということです。

手間暇をかけて育てられた命。
上関の海が育てた地域の誇り。
そして、次の海を守るための力。

今回の取材で、上関車海老を見る目が変わりました。

美味しいから食べる。
それだけではなく、知ったから食べたくなる。
知ったから、誰かに伝えたくなる。

上関車海老は、まさにそんな食材でした。

知ると好きになる。
知ると美味しくなる。
好きになると逢いに行きたくなる。

援むすび山口 上関町編。
光・熊毛地区栽培漁業協会、谷村事務局長のインタビューから見えてきたのは、上関の海を未来へつなぐ、静かで力強い物語でした。


光・熊毛地区栽培漁業センター様より、読者プレゼントを頂きました!

谷村事務局長の「まずは一度食べて、上関車海老の美味しさを知ってほしい」という思いから、上関車海老(冷凍)を抽選で2名様にプレゼント!

活きた車海老を急速冷凍し、鮮度と旨みを閉じ込めた逸品です。解凍後は、お刺身でも美味しくお召し上がりいただけます。

ぜひ、ご家庭で上関車海老ならではの上品な甘みとプリプリの食感をご堪能ください。

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