藤井律子市長インタビュー

「未来を慮(おもんばか)る心を持ってまちづくりをする」
工場のまち・周南市を背負うリーダーとしての覚悟とやさしさが、この言葉に詰まっていました。


FM山口の新井道子アナウンサー(援むすび山口アンバサダー)がマイクを握った特別編。
唯一の女性市長との対話は、やわらかさと熱量が同居する、温かくも力強い時間になりました。(取材日:2025年3月27日)




1. 「しゅうなんブランド」と須金の果実物語
〜農家の団結が生む、地域全体のブランド力〜
インタビュー冒頭、新井アナの柔らかな声が部屋中にあたたかい空気を運び込みます。
藤井市長も「須金の話ならいくらでもできますよ」と笑顔で切り出しました。
須金地区は、周南市北部に広がる豊かな自然に囲まれた農業地帯。
「須金フルーツランド」と呼ばれる15の農園が、東京ドーム約6個分の広さでぶどうや梨を栽培しています。
幸水、豊水、二十世紀、巨峰、ピオーネなど多彩な品種があり、8〜10月にかけて品種ごとの収穫体験が楽しめます。
「須金の生産者は“自分の畑”を守るだけじゃなく、地域全体のブランド価値を上げるために団結しているんです」



須金なしやぶどうは直売所や道の駅するほか、ジャムやワインなどの加工品も人気が高い。
藤井市長が推進する「しゅうなんブランド」制度は、
- 素材が周南市産であること
- 周南市らしさ(物語性や市民の支持)があること
- 独自性・品質性が高いこと
- 信頼性・安全性があること
- 将来性・市場性が見込めること
といった基準を満たした産品を認定。
この制度により、生産者は品質やストーリーを意識したものづくりを続け、「周南らしさ」を市内外に広く発信しています。


2. 鹿野高原豚と周防はもの挑戦
〜山と海、二つの柱で支える周南の食〜
藤井市長が誇らしげに語るのが、鹿野高原豚。
山口県で流通する豚肉の多くが鹿野地区で育てられているといわれます。
「日本一美味しい。だから、市としても高騰が続く飼料代の補填などでしっかり支援しています」
清らかな水と空気、ストレスの少ない環境で育つ鹿野高原豚は、脂は甘く赤身はしっとり。安全で安心、しかも美味しいという三拍子揃ったブランド豚です。
ふるさと納税の返礼品やお歳暮・お中元、道の駅やJAでも人気。海の幸も豊富で、しゅうなんブランドにも認定されている地元特産の「周防はも」など、誇れる食が多数あります。
これらは学校給食にも登場し、地元の子どもたちに「周南市の特産に身近に触れる・味わえる」という環境が作られています。
また、こうした自慢の農水産物において、一次産業で終わらせず、加工・販売まで自ら仕掛け、挑戦を楽しまれる生産者も多いことも周南市の強みです。
藤井市長はこう言います。
「こうした生産者は、作って終わりではなく、加工・販売・発信まで一貫してやりきる。市も全力でサポートする」
鹿野高原豚と周防はも──山と海から周南を支える二つの柱は、この地の誇りです。




3. ソレーネ周南の進化
〜通過型から滞在型へ、欲張りな進化〜
年間70万人が訪れる道の駅「ソレーネ周南」。
市長の頭の中では、次なるステージが描かれています。
キーワードは「通過型から滞在型へ」。
高速道路利用者が立ち寄る場所から、わざわざ行きたくなる目的地へと進化させるため、パーク化構想が進行中です。
芝生広場や屋内の遊び場、親水護岸を設け、こどもまんなかに、誰もが幸せを楽しめる場所に。
「おじいちゃんおばあちゃんは、遊ぶ子どもを見ているだけで元気になる。世代を超えた癒しの場にしたい」
さらに加工体験施設やウォーキングコースなども整備するとともに、
地元食材レストランを強化し、「食べて終わり」ではなく「知って、体験して、味わって帰る」場に。
現在、ソレーネ周南は全国79か所の防災道の駅の1つに選定されており、研修交流室の無停電化や貯水槽などが整備されており、災害時には駐車場の一部を閉鎖して、自衛隊の集合拠点となります。
また、「買い物弱者ゼロ」を目指し、市内の離島である大津島へ移動販売車を運行するなど、生活支援の役割も担っています。
「『だれもが幸せを楽しめる「こどもまんなか駅」ソレーネ周南』をコンセプトに、経済、福祉、防災、遊びー全部を欲張りに詰め込みたいんです」
ソレーネ周南は、地方創生の拠点として進化していきます。
4. 周南コンビナートと未来エネルギー
〜この街から未来の燃料を〜
藤井市長の声色が一段と強まり、熱を帯びたのがこのテーマでした。

「コンビナートが止まれば周南市も止まる。周南市の経済が止まれば、山口県全体に大きな影響が及ぶ」
国内有数のコンビナートの一つである周南は、瀬戸内海に面し、石油化学・化成品など素材産業が集積。そこでは、タイヤや消しゴム、スマートフォンなど、私たちの生活に欠かせない生活用品の原料を製造しております。
市長は工場夜景のネオンを指してこう語ります。
「そこで働く人の数だけ灯りがある」
その灯りは、この街の誇りそのものです。


カーボンニュートラルへの挑戦
周南市は全国的に「カーボンニュートラル」が注目される前からその必要性を理解し、2022年に「周南コンビナート脱炭素推進協議会」を設立。
出光興産、東ソー、トクヤマ、日鉄ステンレス、日本ゼオンといった日本有数の企業が参加し、産学官が一体となって脱炭素社会の実現を目指しています。
「化学工学会の皆さまのサポートをいただき、コンビナートの将来像を一緒に描いてきたんです」
この取り組みから、2050年を見据えた「周南カーボンニュートラルロードマップ」が策定されました。エネルギーの脱炭素化、原料のカーボンニュートラル化、製品のカーボンニュートラル化、CO₂固定化・活用など、具体的な道筋が動き始めています。


未来の燃料をこの街から
特に注目されているのが、アンモニア燃料です。
大型貯蔵タンクのある大浦地区から、海底パイプラインを通じて周辺の工場へ供給する壮大な計画。石炭燃料に比べてCO₂排出量を大幅に削減し、全国の排出削減目標にも貢献します。
「全国民が出すCO₂排出量を“10万”とすると、山口県は約30万、周南市はその9倍に当たる規模を排出している。だからこそ、この街から動き出さなければならないんです」
市長の表情は真剣そのもの。しかしその奥には「周南だからできる」という確信が宿っていました。


産業と観光の両立
コンビナートは単なる産業基盤ではありません。工場夜景を望める晴海親水公園は「日本夜景遺産」にも選ばれ、全国から訪れる観光客に、海上から夜景を鑑賞するクルーズツアーやバスツアー、客室から間近に望むことができる宿泊プランなど、官民が連携して夜型観光の推進に取り組んでいます。
産業の力と観光の魅力、その両輪を回しながら、周南市は未来へ走り続けています。
5. 子育て・人づくりのまち
〜未来を担う子どもたちをまんなかに〜
藤井市長が、一番身を乗り出して話してくれたのがこのテーマでした。声のトーンが柔らかく、しかし力強く響きます。
「子どもは地域の宝です。みんなで大切に育て、社会全体で守っていく。そういう優しい社会を、周南市からつくりたいんです」
全国初の「こどもまんなか宣言」
周南市は、こどもや若者の視点に立ち、その最善の利益を第一に考え、誰もが心身ともに健やかに成長できる社会を目指すために、この宣言を掲げました。
「全国で一番最初に宣言しました。言葉には力があります。だからこそ、まずは『こどもまんなか社会』という旗を高く掲げたかった」
そして、この宣言はスローガンにとどまりません。
- 高校生までの医療費無償化「医療費の心配をせず、子どもが必要なときに必要な医療を受けられるようにしました」
- 保育料無償化(第2子以降の3歳未満児)「所得制限はつけません。家庭環境によって差が出ないようにしたかったんです」
- 通学費補助「山間部から市内中心部の高校へ通う子の負担はとても大きい。こどもの権利の地域格差を減らすために、バスの定期代の一部を市が負担しています」
- 奨学金返済支援「市内企業に就職した若者の奨学金返済額を、市と企業で負担します。若者が地域に残りやすい環境を整えるためです」
市長は、一つひとつの施策の背景や理由を丁寧に語ってくれました。

周南公立大学の公立化と地域循環
市長が就任時から公約に掲げ、実現させたのが徳山大学の公立化です。
「公立化前は、『赤字になるだけだ』『人が集まらない』とおっしゃる人もいました。」
しかし結果的には、受験者は全国から集まり、志願倍率も上昇。
「若い人が周南に来てくれるだけじゃなく、地域の行事や活動に加わってくれる。祭りで神輿を担ぎ、農作業を手伝い、地元の人と食卓を囲む。そうやって『この街、いいな』と思ってもらえることが大事なんです」



女性市長ならではの目線
この「こどもまんなか社会」には女性ならではの視点が息づいています。
「経済や産業の話も大事です。でも、未来を担う子どもたちが笑顔でいられる社会こそが、一番の地域の力なんです」
制度だけでなく、子どもたちや家族の表情まで含めて未来を描く市長の姿は、“母のまなざし”そのものでした。




6. 市長の素顔とぶっちゃけ話
〜未来を慮(おもんばか)る心〜
政策や数字の話だけでなく、人となりが垣間見える瞬間が何度もありました。「ぶっちゃけインタビュー」では、市長は笑顔を見せながらも本音をしっかりと語ってくれました。
女性市長ならではの「気の使い方」
藤井市長の所作や発想には女性ならではの細やかさがあります。花を生けて来客を迎え、市役所の空間に季節感を添え、相手が話しやすいように視線や声のトーンを調整する。相手を慮っての自然な振る舞いです。
「私が政治家になった頃は、女性政治家の数は今と比べて非常に少なく、政治は男性社会でした。そのような中で女性である私は、男性と対等に渡り合えるよう、鎧を着て、つま先立ちで背を高く見せていた時期もありました。しかし、それでは人の声が届かない。同じ目線で聞くほうがずっと大事と気づきました」



工場のまち・周南市で大事にしていること
「産業が未来につながるためには、人が笑顔でいられることが前提です。働く人、その家族、そしてこれから生まれてくる子どもたち──みんなが安心できる循環をつくることが大切なんです」
市長にとって“循環”とは、経済の循環だけでなく、世代を超えたつながりです。現役世代が産業を支え、その成果が子どもたちや高齢者へ還元され、やがてその子どもたちが次の周南をつくる。



女性目線で捉える「未来」
「未来を慮(おもんばか)る心を持ってまちづくりをする」
目の前の課題だけでなく、10年先、50年先の人々の暮らしを思い描き、そのために今できる準備をするということ。工場のまちとしての誇りも、子どもたちの笑顔も、防災や環境の取組も──すべては未来の市民のために。
その視線は、やさしさの中に強い覚悟や熱意が秘められていました。






援むすび山口の地産地消プロデューサーとしてのまとめ
藤井市長との対話から、周南市の地産地消が単なる「地元のものを地元で消費する」という枠に収まらないということです。
それは、産業、観光、教育、福祉、そして人の心までを含んだ、「未来へ続く循環の仕組み」になっています。
須金の果実、鹿野高原豚などの周南の「おいしい」を楽しむ仕掛け、ソレーネ周南のリニューアル、コンビナートのカーボンニュートラルへの挑戦、こどもまんなか宣言──すべて別々の話ではなく、「地域の誇りを未来に引き継ぐ」という一本の軸で繋がっていました。
市長が繰り返し口にした「未来を慮(おもんばか)る心」。
これは、私たちが地産地消を語るときの本質にも重なります。
食べる人と作る人の関係だけでなく、今を生きる私たちと未来を生きる子どもたちの関係まで慮(おもんばか)る──それが本当の地産地消の姿ではないでしょうか。
援むすび山口は、これからもこうした「人と人」「地域と地域」「今と未来」を結ぶ取材を続け、
地産地消をキーワードに、山口県の誇りと物語を全国に届けていきます。

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