取材日:2026年5月11日
聞き手/ヤスベェ応援団長(大谷泰彦さん)
取材・文・撮影/援むすび山口編集長・地産地消プロデューサー 重村光寛

援むすび山口「首長・地産地消リレー」平生町編。
今回は、平生町の浅本邦裕(あさもと くにひろ)町長にお話を伺いました。
聞き手は、援むすび山口のヤスベェ応援団長。
平生町といえば、いま注目されているのが「イタリアーノひらお」。
“イタリア”をテーマにしたまちづくりと聞くと、最初は少し不思議に感じるかもしれません。
なぜ、平生町がイタリアなのか。
なぜ、オリーブ、レモン、イタリア野菜なのか。
そして、それは平生町の食や観光、暮らしの未来にどうつながっていくのか。
今回のインタビューでは、浅本町長の言葉から、平生町という町の“好きになる理由”が少しずつ見えてきました。

①援むすび山口地産地消インタビュー!
外に出たからこそ気づいた、平生町の良さ

ヤスベェ応援団長がまず尋ねたのは、浅本町長が感じる「平生町らしさ」について。
町長は、高校卒業後に町を離れ、大学や仕事を通じて全国各地を見てこられたそうです。若い頃は、平生町について「何もない町」と感じていた時期もあったといいます。しかし、外に出て、47都道府県を巡り、さまざまな地域を見てきたからこそ、故郷の見え方が変わったそうです。「帰ってきたら、やっぱりこんなにいい町だったんだと思いました。景色も素晴らしいし、こんなところはあまりない」
町長が平生町の魅力として挙げたのは、海、景色、そして人。特に「人が優しい」と話す町長の言葉が印象的でした。漁師町としての気質もあり、言葉は少し強く聞こえることがあるかもしれない。でも、それは裏表がなく、正直で、まっすぐな人が多いということでもあります。
派手ではない。
けれど、海があり、山があり、島があり、人の暮らしがある。
それが、浅本町長が感じる平生町の魅力です。

「イタリアーノひらお」は、形から始まった

今回の大きなテーマは、やはり「イタリアーノひらお」です。
ヤスベェ応援団長が「なぜ平生町がイタリアなのか」と尋ねると、町長はとても率直に答えてくださいました。きっかけは、平生町の形がイタリアに似ているという町民の発想だったそうです。つまり、最初からオリーブがたくさんあったからでも、レモンの産地だったからでもありません。
「形が似ている」ことから始まった、遊び心のあるまちづくりでした。
しかし、ここからが平生町の面白いところです。
単なる思いつきで終わらせるのではなく、そこにオリーブ、レモン、イタリア野菜、料理教室、イベント、ロゴマーク、ポロシャツ、町民参加の取り組みなどが重なっていきました。町長は「イタリアーノひらお」は、これだけが正解というものではなく、町民一人ひとりが自分なりの“イタリアーノひらお”を楽しめばいい、と話します。
「イタリアーノひらおに引っかけて、何をやってもいい。町民みんなで楽しんでもらえたら」
この言葉に、平生町らしいまちづくりの柔らかさがあります。


やってみたら、育った。そこに平生町の可能性があった

オリーブ、レモン、イタリア野菜は、平生町で昔から一般的に作られてきた伝統作物というより、「イタリアーノひらお」の流れの中で、新しい特産品として育てているものです。町長のお話では、「イタリアーノひらお」をどう形にするかという中で、オリーブの植栽が始まりました。
令和2年2月ごろには、町内にオリーブの苗木を170本余り植栽。町民の方も参加し、50〜60人ほどが一緒に苗木を植えたそうです。当時植えた苗木は、今では町長の背丈を超えるほどに成長しているとのこと。さらに、オリーブは5種類ほどを試験的に植えたところ、すべて育ったそうです。
「本当に育つかどうかわからなかった。やってみたら育った。気候が似ているということなんでしょうね」と町長。つまり、「イタリアに似ているから始めた」取り組みが、実際に平生町の温暖な気候や風土と結びついたのです。
これは援むすび山口が大切にしている“身土不二”の視点から見ても、とても興味深い話です。
昔からあったものだけが地域資源ではありません。その土地の気候、風土、人の挑戦によって、新しい地域資源が育っていくこともあります。
平生町のオリーブ、レモン、イタリア野菜は、まさにその象徴のように感じました。

町が火種をつくり、町民が楽しみながら育てる

浅本町長は、行政がずっと事業を抱え続けるのではなく、最終的には民間や町民の力で広がっていくことが大切だと話します。たとえば、耕作が難しくなった田畑が太陽光発電に変わっていく現実があります。そこに対して、町長は「太陽光ではなく、オリーブを植えてくれたら」という想いも語ってくださいました。
町内のあちこちにオリーブが植えられ、風景としても「イタリアーノひらお」らしさが育っていく。
それは、単なる特産品づくりではなく、町の景色づくりでもあります。また、企業や学校にオリーブの鉢を置いてもらう取り組みも進められているそうです。町がひとつのテーマを掲げ、それを町民や企業がそれぞれの形で受け取って育てていく。
「イタリアーノひらお」は、行政が一方的に見せるブランドではなく、町民が参加しながら育てていく“余白のあるブランド”なのだと感じました。

Hira ○live(ひらおりーぶ)から始まる、平生町の新しい食の物語

平生町の新しい食の魅力として注目したいのが、平生町産オリーブ100%でつくられたエクストラバージンオリーブオイル、「Hira ○live(ひらおりーぶ)」です。オリーブは、もともと平生町の昔からの特産品というより、「イタリアーノひらお」のまちづくりの中で、新たに育ててきたものです。
取材の中で浅本町長は、複数の品種を試験的に植えたところ、すべて育ったと話してくださいました。平生町の温暖な気候や風土が、オリーブ栽培に合っていたのかもしれません。「Hira ○live」という名前には、Hirao(平生)、Olive(オリーブ)、〇(良い)Live(暮らし・生きる)への想いが込められています。ゼロから始まったオリーブ栽培を、これからの平生町に根づかせたい。そんな願いを感じる名前です。
搾りたてのオリーブオイルは、生で味わうのに向いているそうです。パンにかけたり、瀬戸内の魚と合わせてカルパッチョにしたり、イタリア野菜と組み合わせたりすることで、平生町の食の楽しみ方はさらに広がっていきます。昔からある海の恵みや町内農産物に、新しく育てているオリーブ、レモン、イタリア野菜が重なる。
そこに、平生町らしい新しい食の物語があります。
「Hira ○live(ひらおりーぶ)」は、単なる商品ではなく、平生町の未来へつながる新しい地域ブランドの象徴だと感じました。


「まず来てもらう」ことから、町の魅力は伝わる
観光について、町長は「まず来てもらわないと、なかなか良さはわからない」と話します。大星山展望台、佐合島、丸山海浜パーク、ひらお特産品センター。平生町には、自然や食に触れられる場所があります。
さらに、海を望むライブハウスやゲストハウスには、海外から訪れる人もいるそうです。神戸から移住してきた方が、海に沈む夕日を見て「ここだ」と決めたという話も出ました。こうした話を聞くと、平生町の観光は、単に名所を巡るものではなく、人に出会い、風景に出会い、暮らしの温度に触れるものなのだと感じます。
町長は、都会から人に来てもらうこと、そして平生町の良さを知ってもらうことを、これからの町づくりにおいて大切な課題として捉えています。


平生町の未来に必要なもの
人口減少、高齢化、担い手不足。これは平生町だけでなく、山口県全体、日本全体が抱える課題です。浅本町長は、ある程度の人口を確保することの必要性を語りました。特に、都会から平生町に来てもらう人をどう受け入れるか。そこが重要だと話します。

その流れの中で出てきたのが、道の駅の構想です。
国道188号線沿い、柳井、田布施、平生、上関、周防大島などの地域資源を集められる拠点。
さらに、防災機能を持った道の駅としての可能性。平生町は海抜の低い地域も多く、防災の視点からも高台に広い駐車場や拠点を持つことは意味があると町長は話します。
そこに、イタリアーノひらおの食やレストラン、地域産品が重なれば、単なる休憩施設ではなく、平生町と周辺地域の魅力を発信する場所になるかもしれません。
援むすび山口が進める「道の駅弁プロジェクト」とも、非常に相性の良い話です。


②援むすび山口ぶっちゃけインタビュー!
浅本邦裕町長の“素顔”を教えてください!

平生町のまちづくりや「イタリアーノひらお」について熱く語ってくださった浅本町長ですが、お話を伺っていると、町長ご自身の人柄もとても魅力的でした。まず印象的だったのは、山口県の好きな特産品についての話。町長が挙げられたのは、日本酒でした。
東京から来られた方へのお土産に、山口県を代表するお酒を選ばれたというお話もあり、山口県の酒文化への思いが感じられました。萩で出会った日本酒の話もあり、単に有名だから選ぶのではなく、「自分が美味しいと思ったもの」「人に喜んでもらえるもの」を大切にされている印象です。
そして、ビールに合うものとして出てきたのが「デビラ」。水カレイを干したもので、焼いて食べると美味しいとのこと。町長の愛猫・虎太郎も、デビラを焼くと寄ってくるという、なんとも微笑ましいエピソードも飛び出しました。
さらに、町長の意外な一面として盛り上がったのが、車とファッションの話です。
実は浅本町長は、かなりの車好き。高性能な車へのこだわり、走ることへの憧れ、そして“良いものを選ぶ目”をお持ちです。
また、ファッションにもこだわりがあり、イタリアブランドの服や帽子の話も出てきました。
「イタリアーノひらお」を進める町の町長が、実はとてもおしゃれ。これは偶然のようで、どこか平生町らしい物語にも感じます。
ヤスベェ応援団長との掛け合いの中で見えてきたのは、浅本町長の“硬すぎない魅力”でした。
行政のトップとして町の未来を真剣に考える一方で、猫の話になるとやわらかくなり、車の話になると少年のように楽しそうになり、ファッションの話になると、こだわりがにじむ。
この人柄があるからこそ、「イタリアーノひらお」も、ただの行政施策ではなく、どこか遊び心のあるまちづくりとして広がっているのかもしれません。


③中村店長の「山口直送!トリビアな話」
平生町のトリビアを教えてください!
援むすび山口の人気企画に育てていきたいのが、中村店長の「山口直送!トリビアな話」。山口県各地に眠る、歴史・文化・逸話・人材の“小さな物語”を掘り起こし、思わず誰かに話したくなる形で紹介するコーナーです。今回、平生町編で見えてきたトリビアは大きく2つあります。


トリビア① なぜ平生町が“イタリア”なのか?
平生町が「イタリアーノひらお」を進めている理由。
実はその始まりは、とてもシンプルです。
平生町の形が、イタリアに似ているから。
最初からオリーブが名産だったわけでも、レモンが昔からたくさん作られていたわけでもありません。
まずは「形が似ている」という、町民の遊び心のある発想から始まりました。
けれど、ここからが面白いところです。形から始まった「イタリアーノひらお」が、オリーブの植栽、レモン、イタリア野菜、料理教室、イベント、ロゴマーク、町民参加の取り組みへと広がっていきました。つまり、平生町のイタリアは、ただの“見立て”では終わっていません。
形から始まり、
食につながり、
景色につながり、
町民の楽しみにつながり、
今では平生町の地域ブランドとして育ち始めています。これは、かなり面白い地域ブランディングです。

トリビア② 平生町発?ピザ生地投げ競技「ピッチャオ」
もうひとつ、取材中に盛り上がったのが、ピザ生地を投げて遊ぶ取り組みです。
もともとは、ピザ生地を投げるような動きを楽しむ遊び。子どもたちにも人気があり、距離を競ったり、狙った場所に投げ入れたりと、いろいろな遊び方ができるそうです。
その名前として出てきたのが、「ピザ生地投げてねらっチャオ」。
ただ、少し長い(笑)そこでヤスベェ応援団長との会話の中で、略して「ピッチャオ」というネーミング案が飛び出しました。
ピザの“ピ”と、投げる人の“ピッチャー”。しかも、イタリアーノひらおらしい遊び心もある。これは、平生町発の新しいご当地競技になる可能性があります。将来的には、「第1回 平生町ピッチャオ選手権」「世界ピッチャオ大会」なんて展開も、決して冗談だけでは終わらないかもしれません。
平生町の面白さは、こういうところにあります。
大きな観光名所を一方的に見せるのではなく、町民の発想や遊び心から、小さな物語が生まれていく。「イタリアーノひらお」も、最初は形から。「ピッチャオ」も、会話の中から。知れば知るほど、平生町は少しずつ面白くなっていきます。

取材後記|援むすび山口編集長/地産地消プロデューサーより


今回の平生町取材で、私が最も心を動かされたのは、「イタリアーノひらお」という取り組みの始まり方でした。
きっかけは、平生町のカタチがイタリアに似ているという、町民の方の遊び心ある気づきだったそうです。最初だけを聞けば、少しユニークな町おこしのようにも感じます。しかし、浅本町長のお話を伺ううちに、それは単なる“イタリア風の演出”ではないことが見えてきました。
大切なのは、行政が「イタリア」というわかりやすい火種をつくり、その火を町民、事業者、学校、地域の人たちがそれぞれの形で育てていることです。
オリーブを植える。レモンやイタリア野菜を育てる。料理教室を開く。子どもたちがピザ生地投げを楽しむ。町の施設や商品、イベントの中に、少しずつ「イタリアーノひらお」が息づいていく。
これは、何か大きなオブジェを置いたり、単発イベントで終わらせたりするような表面的な地域PRではありませんでした。
平生町という土地の気候、風土、海、山、人の暮らしの中に、「イタリア」という切り口を重ねることで、町の人たちが自分たちの町をもう一度見つめ直している。そこに、私は深い価値を感じました。
援むすび山口が大切にしているのは、単に「地元のものを食べましょう」という意味だけの地産地消ではありません。
その土地で育ったものを知る。
その土地で暮らす人を知る。
その土地の背景や物語を知る。
そして、知ることで好きになり、好きになることで逢いに行きたくなる。
これこそが、私たちが伝えたい地産地消の本質です。
平生町の「イタリアーノひらお」は、昔からある特産品を守るだけではなく、これからの町の誇りを新しく育てていく挑戦でもあります。オリーブ、レモン、イタリア野菜は、単なる新しい作物ではなく、平生町という環境だからこそ育つかもしれない“未来の地域資源”です。そして何より印象的だったのは、浅本町長を中心に、町全体でその物語を楽しみながら育てようとしている空気でした。
まちづくりに必要なのは、立派な言葉だけではありません。そこに関わる人たちが「面白そう」「自分もやってみよう」と思える余白です。平生町には、その余白がありました。そして、その余白を町のブランドへと育てていく力がありました。今回の取材を通じて、平生町は「イタリアをまねている町」ではなく、イタリアという入口から、自分たちの土地・食・暮らし・人の魅力を再発見している町なのだと感じました。
知ると好きになる。
知ると美味しくなる。
好きになると逢いに行きたくなる。
平生町編は、まさにその言葉を実感する取材でした。


平生町より、素敵なプレゼントをいただきました!

平生町より読者プレゼントとして、「イタリアーノひらおグッズセット」2名様分をご提供いただきました。
【セット内容】
・イタリアーノひらおハンカチ 3種類
・イタリアーノひらおトートバッグ
・平生町観光協会マスコットキャラクター「かんぷうくん」湯呑み
・「かんぷうくん」アクリルスタンド 2種類
中でも注目は、「イタリアーノひらおハンカチ」。
こちらは、令和3年度から「イタリアーノひらお」の推進に取り組む住民団体「ひらおの魅力づくり推進協議会」と、令和4年度から「芸術キャンプひらおと」のコラボにより生まれたものです。
※イタリアーノひらおハンカチは、「ひらおの魅力づくり推進虚偽会」の事業(予算)で制作しており、デザインを広島市立大学に協力していただいたものです。
学生の皆さんが平生町で実際に撮影した風景や、地域の魅力をモチーフにデザインされており、アートを通じて平生町の新たな魅力を発信する、特別なアイテムとなっています。
まちを知ると、少し好きになる。
そんな平生町らしさが詰まった読者プレゼントです。
ぜひこの機会にご応募ください。

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