取材日:2026年5月25日
聞き手・取材・文・撮影/援むすび山口編集長・地産地消プロデューサー 重村光寛
今回のゲスト・一般社団法人コレガーレひらお
代表理事 池田憲二さん

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ

山口県熊毛郡平生町。

海があり、山があり、オリーブがあり、漁業があり、人のつながりがある町。
けれど、その魅力はまだ十分に知られているとは言えないかもしれません。

今回、援むすび山口 平生町編としてお話を伺ったのは、一般社団法人コレガーレひらお 代表理事の池田憲二さん。「コレガーレ」とは、イタリア語で“つなぐ”という意味を持つ言葉です。その名前の通り、コレガーレひらおは、人と人、地域と産業、子どもたちと町の未来をつなぐ活動を続けています。


①援むすび山口地産地消インタビュー!

町をよくしたい。始まりは、町民有志の想いから

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ

コレガーレひらおの始まりは、とてもシンプルでした。

「町をよくしたい」
「平生町をもっと面白くしたい」
「子どもたちに、住みよい町を残したい」

そんな想いを持った町民有志が集まり、活動が少しずつ形になっていきました。池田さん自身は、もともと光市出身。奥様が平生町に縁のある方で、子育てのしやすさや町の人の温かさに触れ、この町に住むことを決めたそうです。平生町で暮らす中で、池田さんが感じたのは、町の賑わいが少しずつ少なくなっていくことでした。かつてあったお祭りや花火大会がなくなり、商店や産業も少しずつ変化していく。その中で、「何かできることはないだろうか」という想いが生まれました。

池田さんは、ある社長から「商売は社会貢献だ」と教わったそうです。自分の仕事だけでなく、地域に対して何ができるのか。社会貢献できる幅を広げることが、商売をする人間として大切なのではないか。その考え方が、コレガーレひらおの活動にもつながっています。

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ


子どもたちに、楽しい町の記憶を残したい

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ

池田さんの話の中で、何度も出てきたのが「子どもたち」という言葉でした。

町を盛り上げたい。
地域資源を発信したい。
人の流れをつくりたい。

それらの先にあるのは、子どもたちが将来、「平生町っていい町だったよね」と思える記憶を残すことです。

子どもの頃に見たお祭り。
運動会の日の特別な空気。
地域の大人たちが楽しそうに動いている姿。

そういう記憶は、大人になってからも心の中に残ります。池田さんは、子どもたちの前で「仕事は楽しいものだ」という姿を見せたいと話されていました。大人が疲れた顔で「仕事に行きたくない」と言うのではなく、楽しそうに働き、地域のために動く。その背中を見た子どもたちが、「自分たちもいつか何かをやってみたい」と感じてくれたらいい。

コレガーレひらおの活動は、単なるイベントづくりではありません。
子どもたちに、町で生きる楽しさを見せる活動でもあるのです。


メルカートは、販売イベントではなく“会話が生まれる場”

コレガーレひらおの代表的な活動のひとつが、「メルカート」です。

メルカートとは、イタリア語で市場のこと。平生町では「イタリアーノひらお」という地域プロモーションが進められており、その世界観ともつながる名前です。コレガーレひらおが手がけるメルカートは、単に商品を売るためのイベントではありません。地元の人が集まり、出店者と会話し、地域の魅力を知り、子どもたちが楽しめる場。そこには、地域の消費だけではなく、交流が生まれます。

特に印象的だったのが、佐賀漁協前で行われる海辺の朝市「メルカート・デル・マーレ」です。デル・マーレとは、“海の”という意味を持つ言葉。平生町の海、佐賀地区、漁業の魅力を伝えるための取り組みです。池田さんたちは、佐賀漁協の漁師さんたちともつながりながら、平生町の海の魅力をもう一度見つめ直そうとしています。実は、平生町の海には、ハモ、鯛、ウニなど、魅力的な海産物があります。しかし、それが町内で十分に知られているか、食卓に上がっているかというと、まだ課題もあります。

良いものがある。
でも、知られていない。
食べられる場所が限られている。
町の人自身も、その価値に気づききれていない。

だからこそ、メルカートには意味があります。

漁師さんが自分たちの魚を届ける。町の人がそれを知る。子どもたちが海の仕事や地域の食に触れる。そこから、平生町の新しい地産地消が始まっていくのです。

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ


平生町には、まだ知られていない地域資源がある

池田さんに、平生町のまだ知られていない地域資源について伺うと、オリーブ、ブルーベリー、漁業、そして人の魅力が挙がりました。中でも印象的だったのが、オリーブです。平生町では「イタリアーノひらお」という切り口の中で、オリーブを活かした取り組みも進められています。コレガーレひらおでは、平生町のオリーブオイルを使ったオリーブジェラートも展開しています。

バニラの中にオリーブの香りがふわっと広がる、大人向けの味わい。上野商店や朝市、亀の井ホテルなどでも扱われているそうです。けれど、ここにも池田さんたちの課題があります。ただ「オリーブジェラートがあります」と伝えるだけでは、平生町らしさは十分に伝わらない。

なぜ平生町でオリーブなのか。
なぜイタリアーノひらおなのか。
なぜこの町で味わう意味があるのか。

その物語を、もっとわかりやすく伝えていく必要があります。これは、援むすび山口が大切にしている視点とも重なります。

知ると好きになる。
知ると美味しくなる。
好きになると逢いに行きたくなる。

平生町曽根で開催された「ふれあいそね さくらまつり」では、衆議院議員の岸信千代さんにもオリーブジェラートをお召し上がりいただきました。地域の方々はもちろん、町外から訪れた方々にも平生町の新たな魅力として注目を集めています。

コレガーレひらおの挑戦は、単に特産品を販売することではありません。平生町という地域そのものの価値を伝え、「また来たい」「もっと知りたい」と思ってもらうきっかけをつくること。その積み重ねが、平生町の未来につながっていくのだと感じました。

地域資源は、ただ存在しているだけでは届きません。そこに物語があり、伝え方があり、人の言葉があることで、初めて魅力として動き出します。

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ


“イタリアーノひらお”を、町民の手で形にしていく

平生町は、地形がイタリア半島に似ていることから「イタリアーノひらお」という地域プロモーションを進めています。池田さんは、この言葉を単なるキャッチコピーで終わらせたくないと考えています。「瀬戸内のハワイ」があるなら、「瀬戸内のイタリア」があってもいい。そう考えながら、メルカートの中に、少しずつ“平生町らしいイタリア”を作ろうとしています。

オリーブ。
海。
市場。
カルパッチョ。
ジェラート。
人が集まり、会話が生まれる朝市。

本物のイタリアをそのまま真似るのではなく、平生町の海や食や人のつながりを活かしながら、「これが平生町のイタリアです」と語れる形にしていく。そこに、コレガーレひらおの面白さがあります。行政が掲げたテーマを、民間が自分たちの手で引き受け、育てていく。それは簡単なことではありません。けれど、池田さんたちは「誰もやっていないなら、自分たちがやってみよう」と考えます。その前向きさが、平生町の可能性を少しずつ動かしています。

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ


平生町の人柄は、“一歩踏み込んで力を貸してくれる”こと

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ

池田さんから見た平生町の人柄について伺うと、印象的だったのは、平生町の人たちが持つ“関わる力”でした。池田さんは、平生町の人柄について、率直に意見を交わしながらも、いざ動くとなれば自然と力を貸してくれる町だと話してくれました。これは、とても平生町らしい言葉だと感じました。

ただ優しいだけではない。
ただ仲が良いだけでもない。

それぞれに意見があり、個性があり、ときには考え方がぶつかることもある。でも、最後には「町をよくしたい」という方向に向かって動いていく。コレガーレひらおのメンバーも、もともと同じ場所にいた人たちばかりではありません。外から来た人、商店を営む人、子ども会に関わる人、観光や地域活動に関わる人。それぞれの立場は違っても、「平生町をなんとかしたい」という想いでつながっています。コレガーレひらおという名前は、まさにその姿を表しています。


②援むすび山口ぶっちゃけインタビュー!

池田さんの素顔。炭火、釜屋のうどん、キャンピングカー

ぶっちゃけインタビューでは、池田さんの素顔も伺いました。

一時期、炭火にハマっていたという池田さん。
炭で焼くと、肉も魚も野菜も美味しくなる。コロナ禍には、毎日のように炭を起こして、いろいろな食材を焼いて楽しんでいたそうです。

思い出のソウルフードとして挙げてくれたのは、平生町の「うどんの釜屋 平生店」。

手打ちならではの平べったい麺が印象的な、平生町のうどん店。看板メニューのひとつ「肉ごぼう天うどん」は、地元の人にも親しまれる一杯です

おすすめの場所として教えてくれたのは、秋森の海辺。

キャンピングカーを停めて、海を眺めながらそうめんを食べたり、朝にラジオ体操をしたり。
そんな何気ない時間の中にも、平生町の魅力があると池田さんは感じています。

また、キャンピングカーで各地を巡る中で、他の地域の魅力にも触れ、「平生町ももっと面白くできる」と思うようになったそうです。

外に出たからこそ、地元の可能性に気づく。
それもまた、池田さんらしい視点です。

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ


③中村店長の「山口直送!トリビアな話」

平生町では、運動会にキッチンカーがやってくる?

昔の運動会といえば、家族でお弁当を囲む時間も、大切な思い出のひとつでした。校庭にレジャーシートを広げ、おにぎりや唐揚げ、果物を食べながら過ごす一日。競技だけでなく、その空気そのものが、子どもたちの記憶に残っていたのではないでしょうか。ところが今、平生町では少し新しい形の“学校と地域のつながり”が生まれています。佐賀小学校の運動会では、キッチンカーが出店し、子どもたちや保護者に喜ばれたそうです。今の時代、民間事業者が学校に入り、地域イベントのような形で学校行事に関わることは、決して当たり前ではありません。けれど平生町では、学校、地域、保護者、事業者をつなぐ人たちの存在によって、それが実現しています。これは単に「運動会にキッチンカーが来た」という話ではありません。

子どもたちに、地域の大人たちが楽しそうに関わる姿を見せること。
学校を、地域の人たちが自然につながる場にすること。
そして、子どもたちが大人になったときに思い出せる“平生町らしい一日”を残すこと。

そこに、コレガーレひらおの想いがあります。

さらに、佐賀小学校、平生中学校、熊毛南高校、広島市立大学などが関わるタイルアートの取り組みも進められているそうです。子どもたち、学生、地域の人たちが一緒になって何かをつくり、それがメルカートの場に並ぶ。それは、平生町の未来を、町の人たちみんなで描いていくような取り組みです。平生町のトリビアは、地形がイタリアに似ていることだけではありません。この町では、学校行事や地域イベントが、子どもたちの記憶をつくる場になりはじめています。

知ると好きになる。
知ると、少しあたたかい気持ちになる。
そして、いつかその場所に行ってみたくなる。

平生町には、そんな“小さな未来の物語”が生まれています。

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ


取材後記|援むすび山口編集長/地産地消プロデューサーとして

取材の最後に、強く残ったのは、平生町という町が持つ“余白”でした。

平生町は、すでに完成された観光地ではありません。
全国的に知られた大きな名物がある町でも、派手な観光スポットが並ぶ町でもないかもしれません。けれど、それは魅力がないという意味ではありません。むしろ、まだ言葉になっていない魅力、まだ磨かれていない地域資源、まだつながりきっていない人や場所が、町の中に点在しているということです。

池田さんは、取材の中でこう話してくれました。「何もないからこそ、何でも作れる」この言葉は、平生町の今をとてもよく表しているように感じました。

海がある。
漁業がある。
オリーブがある。
農産物がある。
人がいる。
子どもたちがいる。
そして、地域をよくしたいと思う大人たちがいる。

大切なのは、それらをただ並べることではありません。
どうつなぎ、どう伝え、どう体験に変えていくかです。

編集長の目線で見ると、平生町にはまだまだ“物語にできる素材”があります。
海辺の朝市、メルカート、オリーブジェラート、佐賀地区の漁業、学校と地域のつながり、子どもたちの記憶づくり。それぞれは小さな点かもしれません。しかし、その点を丁寧につなげば、平生町らしい物語になります。

地産地消プロデューサーの目線で見ると、平生町の地産地消は、単に「地元のものを食べること」だけではありません。

地元の海を知ること。
地元の食材に出会うこと。
地元の人の想いを聞くこと。
地元の子どもたちに、町の記憶を残すこと。
そして、地元の大人たちが楽しそうに働き、地域に関わる姿を見せること。

それらすべてが、平生町の地産地消を育てていく力になるのだと思います。コレガーレひらおの活動は、単なる地域イベントではありません。平生町の中にある地域資源を見つけ直し、人と人をつなぎ、町の未来に向けて小さな賑わいをつくっていく取り組みです。

今あるものを見つめ直す。
まだ知られていない価値を言葉にする。
地域の人たち自身が、自分たちの町の良さに気づく。
そして、その魅力を町外の人にも届けていく。

それはまさに、援むすび山口が大切にしている役割とも重なります。

知ると好きになる。
知ると美味しくなる。
好きになると逢いに行きたくなる。

平生町には、まだまだ“逢いに行きたくなる理由”があります。コレガーレひらおがつなごうとしているのは、今ある町の魅力だけではありません。

これから生まれていく平生町の可能性。
子どもたちに残したい町の記憶。
そして、地域の人たちが自分たちの手で未来をつくっていく力。

今回の取材を通じて、平生町は「何もない町」ではなく、これから何かが生まれていく町なのだと感じました。その可能性をどう見つけ、どう編集し、どう届けていくか。援むすび山口として、これからも平生町の“これから”を丁寧に追いかけていきたいと思います。

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ


コレガーレひらお様より、読者プレゼントをいただきました!

一般社団法人コレガーレひらお・株式会社サザンセトランド・メルカート デル マーレ・オリーブジェラード
※写真はイメージです

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