取材日:2026年8月28日
聞き手・取材・文・撮影/援むすび山口編集長・地産地消プロデューサー 重村光寛
今回のゲスト・道の駅 サザンセトとうわ 岡﨑竜一 駅長




道の駅サザンセトとうわ 岡﨑竜一駅長
海を眺めながら走るサイクリング。
大島みかんに、瀬戸内のいりこ。
地元の生産者が届ける農産物。
そして、新しい商売に挑戦する人たちが集まるチャレンジショップ。
周防大島町にある「道の駅 サザンセトとうわ」は、単に商品を買ったり、休憩したりするためだけの道の駅ではありません。岡﨑竜一駅長は、ここをはっきりと「観光の拠点」と話します。周防大島を訪れた人が、まずここへ来る。そして島の食や観光情報に触れ、そこから島の各地へ向かっていく。
「うちは明らかに目的地型の道の駅なんです」
その言葉から、道の駅を起点に周防大島全体を楽しんでもらおうという考えが見えてきました。
① 援むすび山口地産地消インタビュー

道の駅サザンセトとうわ 岡﨑竜一駅長
1.サザンセトとうわは、周防大島の「観光の拠点」
「道の駅の役割は何ですか?」そう尋ねると、岡﨑駅長は迷わず「観光の拠点」と答えました。周防大島は一周約92km。島そのものが大きく、海、山、温泉、キャンプ場、ビーチ、食、さまざまな見どころがあります。その中でサザンセトとうわは、島のちょうど真ん中あたりに位置しています。まずここに立ち寄り、地元の商品を見て、観光情報を集め、そこから島の東西へ出かけていく。岡﨑駅長が目指しているのは、単なる「休憩するための道の駅」ではありません。
「うちは明らかに、目的地型の道の駅なんです」
周防大島へ遊びに来る人に、まずサザンセトとうわへ来てもらい、そこから島全体を楽しんでもらう。その入口としての役割を担っています。


2.周防大島といえば、やっぱり「みかん」。そして、知ってほしい「いりこ」
周防大島を代表する農産物といえば、やはりみかんです。岡﨑駅長自身もみかんを育てており、取材当時も雨が少なく、水やりの大変さを話してくれました。周防大島のみかんを育ててきたのは、海に面した段々畑です。水はけが良く、海からの潮風を受ける環境は、みかんづくりに適しています。しかし現在は、生産者の高齢化によって段々畑の管理そのものが難しくなり、平地での栽培が増えているそうです。
「環境としては、すごくいいみかんができるんです」
だからこそ、その環境を次の世代へ残していかなければならない。“おいしいみかんを売る”という話だけでなく、“みかんをつくり続けられる島をどう残すのか”まで考える岡﨑駅長の言葉が印象的でした。そしてもうひとつ、岡﨑駅長が知ってほしいと話すのが、周防大島の「いりこ」。この海で獲れるカタクチイワシは品質が高く、いりことして加工され全国へ出荷されています。
サザンセトとうわのレストランでは、鮮度の良い小イワシを使った「小いわし定食」も人気。イワシは鮮度が落ちるのが早いため、刺身で味わえるのは産地ならではです。「これ、道の駅ができた頃からずっと人気なんですよ」みかんだけではない。海に囲まれた周防大島だからこその味があります。
3.生産者と道の駅をつなぐものは「信頼関係」

「生産者とのつながりで大切にしていることは?」岡﨑駅長の答えは、とてもシンプルでした。「やっぱり信頼関係でしょうね」道の駅は、一般的なスーパーとは少し立場が違います。
商品をできるだけ安く仕入れて利益を上げることだけを考えるのではなく、生産者の商品を預かり、販売し、その価値を消費者へ届けていく。だから岡﨑駅長は、生産者にこう求めます。


いいものを出してほしい。
その代わり、自分たちはお客様を呼んでくる。生産者と道の駅、それぞれに役割があります。現在、登録している生産者は約260人。しかし島の中には、「道の駅にどうやって出品すればいいのかわからない」「難しそう」と感じている人もまだいるそうです。そこで、出品方法をわかりやすく伝える漫画までつくっているという岡﨑駅長。商品を集めるだけではない。生産者そのものを増やすことも、道の駅の仕事だと考えています。




4.「大島でつくったものを、大島で食べる」という贅沢

レストランで使われているお米にも、岡﨑駅長のこだわりがあります。使っているのは、大島産のお米。実は周防大島は、昔は米づくりも盛んな地域だったそうです。現在は生産量が決して多くないため、道の駅の売場に並べるほどの量はありません。だからこそ、レストランで食べてもらう。若い生産者がつくった大島産のお米を、大島で獲れた魚や野菜と一緒に食べる。
「ここへ来なければ食べられない」それも立派な観光資源です。地産地消とは、単に県産食材を使うことではありません。その土地へ行き、その土地の風景の中で、その土地のものを味わう。サザンセトとうわには、そんな地産地消があります。
5.「瀬戸内のハワイ」は、雰囲気だけではない

周防大島は「瀬戸内のハワイ」と呼ばれています。サザンセトとうわでも、アロハシャツ、フラダンス、ティキ、黄色いアロハポストなど、ハワイを感じる風景を見ることができます。しかし、単に南国らしい雰囲気を演出しているだけではありません。周防大島には、ハワイへの移民を通した歴史的なつながりがあり、ハワイ・カウアイ島とは姉妹島として交流を続けてきました。
サザンセトとうわにある黄色い「アロハポスト」も、そのつながりを象徴するものの一つ。カウアイ島との姉妹島提携60周年を記念してつくられたもので、今では人気のフォトスポットにもなっています。だからこそ岡﨑駅長も、これからの周防大島の観光を考えるうえで、「ハワイというのは、大きなキーワードだと思います」と話します。
歴史を知れば、アロハシャツも、フラも、黄色いポストも、ただの演出ではなくなります。「なぜここにハワイがあるのか」その背景まで知ることで、周防大島の楽しみ方は、もっと深くなります。
6.岡﨑駅長が一番熱くなる話。「周防大島を自転車の島にしたい」



取材中、岡﨑駅長の声が一段と熱くなった瞬間がありました。自転車の話になった時です。
周防大島は一周約92km。
海沿いを走れば比較的アップダウンも少なく、初心者でも楽しみやすい。一方、山側のオレンジロードへ入れば、アップダウンのある本格的なコースになります。
海もある。
山もある。
信号も少ない。
そして雪も少ない。
「自転車で走るには、本当にいいんですよ」そして岡﨑駅長は、少し誇らしそうにこう話しました。「しまなみ海道にも負けてないと思ってますからね」それほど、自転車で巡る周防大島に自信を持っています。
実は岡﨑駅長自身も、自転車が大好き。
健康のために始めたロードバイクがきっかけとなり、今では「周防大島を自転車の島にしたい」と活動するまでになりました。サイクリスト仲間から、「いろんな場所を走ったけど、大島は抜群にいい」そう言われたことが、背中を押してくれたそうです。

7.チャレンジショップは、「商売を始める人」を育てる場所
サザンセトとうわには、「チャレンジショップ」があります。これからお店を始めたい人が、比較的低い賃料で実際に商売を経験し、次の出店につなげるための場所です。つまり道の駅が、商品を売る場所であると同時に、「商売を始める人を育てる場所」にもなっています。
現在の出店者には島外から来た人も多く、ベーグル、コーヒー、たこ焼き、みかんジュース、ラーメンなど、個性的な店が集まっています。観光客が集まる道の駅で経験を積み、ファンをつくり、その後、自分の店を持つ。地域に新しい商売が生まれる入口になっています。

8.新しい人が入ることで、島も変わっていく

チャレンジショップから実際に独立し、島内で人気店になった例もあります。岡﨑駅長がうれしそうに話してくれたのは、チャレンジショップを卒業した店に、今も多くのお客様が訪れていること。
新しい店ができる。
そこへ人が集まる。
その店を目的に、また島へ人がやって来る。
これは単なる「空きスペースの活用」ではありません。地域に新しい仕事と、新しい目的地を生み出す仕組みです。「いろんな人たちが一緒になって、この道の駅を盛り上げてもらう。それはありがたいですよ」島外から来た人たちも含め、一緒に周防大島を面白くしていく。そこにも、岡﨑駅長らしい“ウェルカム”の姿勢がありました。

9.「地元のものを、見てほしい。買ってほしい」

サザンセトとうわでは、昔からできるだけ周防大島周辺の商品を集めてきました。岡﨑駅長は、その理由をこう話します。「やっぱり地元のものを買ってほしいし、見てほしいんですよね」
観光客が地元の商品を買う。
その売上が生産者へ戻る。
また次の商品がつくられる。
そして、その商品を目当てに、また人が来る。
地産地消は、単なる「山口県産を使っています」という表示ではありません。人と商品とお金を、地域の中で循環させることです。一方で、遠方のファンから「通販で買いたい」という声も増えています。オンライン販売も考えていますが、岡﨑駅長の本音はやはり、「できれば来てほしい」です。画面の中だけでは伝わらない。海の景色も、島の空気も、人との会話も含めて、周防大島だからです。
10.「行ってみたい」「また来たい」「住んでみたい」と思える島へ

最後に、これからどんな道の駅にしていきたいのかを聞きました。岡﨑駅長が話したのは、華やかな新施設のことでも、大きな売上目標のことでもありませんでした。
「次の担い手ですよね」
高齢化が進み、人口が減っていく。だからこそ、次の世代に続く人が必要です。チャレンジショップも、自転車も、観光も、地産地消も、すべてそのためのきっかけになります。移住してきた人が、
「周防大島って面白いな」
「ここで何かやってみたいな」
と思える島にする。
そして観光で来た人には、
「また来たい」と思ってもらう。


岡﨑駅長の話を聞いていると、すべてが一本につながっていることに気づきます。
みかんを残すことも。
生産者を増やすことも。
チャレンジショップで店を育てることも。
観光客を呼ぶことも。
自転車で島を巡ってもらうことも。
全部、周防大島を次の世代へつなぐため。
そして岡﨑駅長が一番伝えたいのは、きっと難しいことではありません。
まず、周防大島へ来てほしい。
大島大橋を渡り、
サザンセトとうわへ来て、
地元のものを食べて、
人と話して、
そしてできれば、自転車に乗ってほしい。
海沿いをゆっくり走るのもいい。
オレンジロードを本気で走るのもいい。
春や秋なら、特に気持ちよく走れるそうです。レンタサイクルも用意されています。
車の窓から見る周防大島と、
自転車で風を感じながら見る周防大島は、
きっと違います。
岡﨑駅長がこれほどまでに愛する島を、
今度は自分の足で巡ってみてください。
「周防大島を、自転車の島にしたい。」
その熱は、話を聞いているこちらまで、
自転車に乗って島を走ってみたくなるほどでした。
「道の駅に寄る」のではなく、
道の駅から、周防大島を楽しむ。
それが、岡﨑駅長がつくろうとしている
「道の駅 サザンセトとうわ」の姿なのだと思います。


② 援むすび山口ぶっちゃけインタビュー!

岡﨑竜一駅長の“素顔”を聞きました
Q1|好きな食べ物は?
意外にも答えは「カニ」。関西で暮らしていた頃、冬になると城崎方面などへカニを食べに行くことが楽しみだったそうです。一方、周防大島で育った岡﨑駅長にとって、新鮮な魚は昔から当たり前の存在。島を離れて初めて、地元の魚のおいしさに気づいたといいます。
Q2|思い出のソウルフードは?
一つは、お母さんがつくってくれた「豆腐の甘辛煮」。地元の豆腐屋さんの少し硬めの木綿豆腐を、醤油と砂糖で煮たもの。「何枚でも食べましたよ」と懐かしそうに話してくれました。
もう一つは、「たちばなや食堂」のいりこだしの中華そば。子どもの頃、そろばんの検定試験の帰りなどに食べていた思い出の味で、島を離れている時にも食べたくなったそうです。
Q3|おすすめの観光スポットは?
岡﨑駅長のおすすめは「星のビーチ」。サイクリストのフォトスポットとしても人気で、夜は星空も美しい場所だそうです。



Q4|実は、元フラワーデザイナー!
岡﨑駅長には、意外な経歴があります。周防大島を離れ、関西で長くフラワーデザイナーとして働いていました。その後、故郷へ戻り、健康のために始めたロードバイクに夢中になります。サイクリスト仲間から、「大島は自転車で走るには抜群の島」と背中を押され、「この大島を自転車の島にしたい」という思いへ。現在のサイクルアイランドづくりにつながっていきました。

③ 中村店長の「山口直送!トリビアな話」を教えて下さい!

実は、あのみかんソフトは「青いみかん」からできている!
道の駅 サザンセトとうわの人気商品「みかんソフト」。普通の完熟みかんを使っていると思っていたら、実は違いました。使われているのは、みかんを育てる途中で間引く「摘果みかん」。まだ青い小さなみかんを搾って使うことで、ほどよい酸味が加わり、すっきりとした味わいになります。
岡﨑駅長いわく、「だから、さっぱり食べられるんです」
さらに、本来は商品になりにくい摘果みかんを活用することで、フードロスの削減にもつながります。知ると美味しくなる。次にサザンセトとうわへ行ったら、ぜひこの物語を思い出しながら、みかんソフトを味わってみてください。


取材後記|援むすび山口編集長/地産地消プロデューサーとして

周防大島を、本気で面白くしたい人。
今回の取材で最も印象に残ったのは、岡﨑駅長の「本当に周防大島を元気にしたい」という想いでした。みかんの生産者を守ること、若い担い手を育てること、新しく商売を始める人を応援すること、そしてもっと多くの人に周防大島へ来てもらうこと。話題は違っても、すべてが「この島を次の世代へつなぎたい」という一つの気持ちにつながっています。
岡﨑駅長は、難しい言葉で地域活性化を語る人ではありません。よく笑い、冗談も交えながら、時には自分のことを照れくさそうに話す、とても親しみやすい方です。
元フラワーデザイナーという意外な経歴を持ち、一度は関西で暮らした後、故郷の周防大島へ戻ってきました。島の中だけで暮らしてきたわけではないからこそ、外から見た周防大島の良さにも気づいているのだと思います。
そして何より、岡﨑駅長は「言うだけ」ではなく、自分で動く人です。
その象徴が、自転車でした。健康のために始めたロードバイク。「退職金を握りしめて買ったんですよ」と笑いながら話してくれましたが、今では朝も自転車に乗り、「周防大島を自転車の島にしたい」と本気で活動しています。海沿いは初心者でも走りやすく、オレンジロードでは本格的なサイクリングも楽しめる。海も山もあり、信号も少ない。「しまなみ海道にも負けてないと思ってますからね」その言葉を話す時の岡﨑駅長は、本当に楽しそうでした。
自転車が好きだから、自分で走る。
走って魅力を知ったから、人にも走ってほしい。
そして、それを観光や地域づくりにつなげていく。
そこに、岡﨑駅長らしさがあります。

また、取材の中で何度も感じたのが、その気さくさと温かさです。自分の功績を前に出すのではなく、周りの人や地域の取り組みを自然に話しながら、「自分がやっているわけじゃない」と笑う。でも、周防大島の未来の話になると、言葉にしっかり熱が入ります。岡﨑駅長が目指しているのは、道の駅だけを繁盛させることではありません。道の駅に人を呼び、そこから島を巡ってもらい、地元の商品を買い、食べ、新しい店や仕事が生まれていく。
サザンセトとうわを起点に、周防大島全体を元気にしていきたい。その本気が、取材を通してずっと伝わってきました。だから、ぜひ一度周防大島へ行ってみてください。サザンセトとうわでみかんソフトを食べ、海を眺め、できれば自転車に乗って島を巡ってみてほしい。
「周防大島を、自転車の島にしたい。」
その言葉は、私たちには、「もっと、この島を好きになってほしい」というメッセージに聞こえました。
人を知ると、その場所をもっと知りたくなる。
その人の本気を知ると、そこへ逢いに行きたくなる。
岡﨑駅長という人を知ったことで、私たちはまたひとつ、周防大島へ行く理由を見つけました。
それが、援むすび山口が伝えたい
「ひと」から始まる地域の物語です。

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